目的のエネルギー:組織の持つ3つのエネルギー

人と組織のエネルギーを高く保ち、戦略の実行力を上げて業績を向上させていくことは、極めて重要です。

6つあるエネルギーの中でも最も大切なものだと考えている「目的のエネルギー」は、 常に目的や意義が明確な状態で取り組むことによって得られるエネルギーです。

WHYから始めよ!

マーケティングコンサルタントのサイモンシネックは、目的や意義を明確に語ることの重要性を「WHYから始めよ!」という言葉で強調しています。

人々の胸をときめかせ、鼓舞することに成功した個人や組織がとってきた行動のパターンは、すべてWHY(なぜ)から始まっていると主張します。

彼はそのことを「ゴールデンサークル」を使って、劇的にシンプルに分かりやすく説明しました。

GOLDEN CIRCLE

サイモンシネックは、この「ゴールデン・サークル」の原理を実践する好例として、独自の道を歩み成功を遂げ、革新的な企業であり続けているAppleを取り上げています。

パソコンを革新した時、もしもAppleが外側からのメッセージの送り方をしたとしたら、こんな感じになるでしょう。

「われわれは、すばらしいコンピュータを作っています。美しいデザイン、シンプルな操作法、取り扱いも簡単。一台、いかがですか?」

  • 自社がしていることを説明し
  • どんな手法をとったかを説明し
  • さあ購入しましょうと呼びかける

これが大半の企業にとっての標準ですが、Appleは違う順番でアウトプットしたのです。

「現状に挑戦し、他社とは違う考え方をする。それが私たちの信条です。製品を美しくデザインし、操作法をシンプルにし、取り扱いを簡単にすることで、私たちは現状に挑戦しています。その結果、すばらしいコンピュータが誕生しました。 一台、いかがですか?」

情報の順番をひっくり返しただけですが、これこそ「WHYから始まるメッセージ」であり、人々はWHATではなく、それをしているWHYを買うということです。

Appleを際立たせているのは、AppleのWHATではなく、それをしているWHYなのです。Appleの製品は、彼らの信念に命を吹き込んだものなのです。

(ここまでは、サイモンシネック著「WHYから始めよ!―インスパイア型リーダーはここが違う」を一部引用しました)

この「WHYから始める」ことで、人々の胸をときめかせ、鼓舞し、行動を変えていくことこそ、目的のエネルギーの本質です。

組織変革の現場では、「企業理念」「自分の仕事の意義」「経営目標の腹落ち」が具体的なテーマになります。

目的のエネルギー

常に目的を明確にすることによるエネルギー

目的のエネルギー 
										1.企業理念・ビジョン
企業理念・ビジョンが明確で、共感できるものである。
2. 経営目標
経営目標の設定の背景を理解し、どうすれば達成できるかを考え抜く。
3. 意義の納得
組織の存在意義や自分の仕事の根本的な意義を納得して取り組む。

企業理念・ビジョン

本来は企業理念こそが、企業にとっての「WHY」となっているはずのものです。ところが、諸般の事情によって、そのままでは「WHY」たりえないという場合もあります。

  • 創業以来受け継がれたもので、趣旨はよいが、言葉が古くなっている
  • 内外のステークホルダーに対して、全方位で作ったもので、社員向けのメッセージが弱い内容になっている
  • 趣旨として、目的や意義を表わすものになっているが、表現として、人々の胸をときめかせ、鼓舞し、行動を変えていくことのできるものになっていない

このような場合は、企業理念をそのまま扱うのではなく、解釈のプロセスを加える等の何らかの施策が必要です。

1.部門ごとのブレイクダウンをする

企業理念が、我が部門で言えば、どのようなことを意味するのかを、部門単位で検討し「部門理念(WHYたりえる表現)」として表現します。このブレイクダウン作業のプロセスそのものが、部門メンバーの意識をすり合わせるという部門研修にもなるという副産物つきです。

2.増築によって、補なう

ある企業では、企業理念が、歴史を踏まえた受け継ぐべき創業の精神を反映したもので、手を加えず大切にはしたいものであることから、次のように三階建にして、日常的には、1.と 2.を「WHY」として意識していくものとして再構築しました。

  1. ① 企業理念
  2. ② コア・パーパス(存在意義)
  3. ③ コア・バリュー(らしさ・価値観)
3.スローガンを掲げる

企業理念のサブテーマとして、毎年一年間「WHY」として掲げるスローガンを、社員から募集して決定する。

意義の納得

任されているセクションのWHYを語ること、部下の仕事のWHYを語ることは、管理職の重要な仕事であり、それができる人であるかどうかは、要件の重要なひとつと考えたいと思います。

一方、毎年課単位で、自分の課の役割、自分自身の仕事の「WHY」をメンバー全員で話し合い、確認するという方法も非常によい方法です。これを「WHYワークショップ」と呼んでいます。

いくつかの仕事のWHYの例を見ておきましょう。

1.ある会社の経理部長の言葉

「経理部は、会計処理や決算業務を作業にしていることは間違いないが、作業が目的ではない」

「飛行機でいえば機長である社長が、コックピットに座っているのをイメージしろ」

「我々が会社の状態をタイムリーに、かつ正確に表現することで、社長を一流のパイロットにしているんだ」

部長のこのひと言で経理部のメンバーの表情が変わりました。

2.ある会社の法務部長の言葉

「我々は法やルールの番人ではなく、世の中やお客様に感じてもらう会社の信頼のベースを 作っている仕事なんだ」

3.就職情報誌の営業部長の言葉

日々厳しい目標を達成する為、飛び込み営業の繰り返しに疲弊している新人営業マンに対して営業部長がこう言いました。

「我々の仕事はこの雑誌のスペースを埋めることに間違いはないが、ここに良い会社の情報を載せることで“求職者が良い会社に出会う機会を作っている”ということを忘れるな」

この言葉が彼が退職を思い留まり、後にトップ営業マンへとのし上がっていくきっかけになりました。

このように、それぞれの仕事について、やっていること(WHAT)をそのまま言うのではなく、「我々は、結局のところ何をしているのか」という仕事の本質を語らなくてはならない局面が必ずやってきます。

その時のチェック基準は、次の3つになると考えています。

【WHYの三原則】

その言葉を聞いた者が・・・

  1. 見失いかけていた、その仕事の本質を再認識する。(結局のところ、自分は何をしているということになるのか)
  2. 忘れていたその仕事への誇りを取り戻す
  3. 仕事が「作業」になって、小さくなっていた視野や取り組みスタンスや心が「大きく」なる

経営目標

目標設定の仕方がトップダウン方式であることが原因で、経営目標がやらされ感になっている例は多くあります。目標設定の背景を知り、納得して、本気で取り組めることも「目的のエネルギー」のひとつです。

目標設定のタイミングは、その背景と意思を理解、共有し目的のエネルギーを高める絶好の機会です。

  1. 全社目標設定の背景、意思
  2. 全社目標から部門目標へのブレイクダウン
  3. 部門目標から課目標へのブレイクダウン
  4. 課目標から個人目標へのブレイクダウン

この4段階において、目標設定の背景と、ブレイクダウンの際の目標の割り振りの意味への理解・納得度を高める工夫と配慮を行ないます。

このように・・・

  • 企業理念を腹落ちできるレベルで自分のものにする
  • 自分の仕事の意義を再確認することで、本質と誇りと大きく考える心を取り戻す
  • 追いかける目標の背景と意思を再確認して納得する

という3つのことをした時の人と組織のエネルギーレベルは、他のこととは次元の違うものになってきます。

それは、WHYとなる内容が、その性質上「理想」や「哲学」と言えるものであり、全てのことの前提であり、源泉と言えるものだからなのです。

株式会社マングローブのおもしろルール 「目的のエネルギー」に関するマングローブでの実践例