09 人材

組織戦略における「人材」について考える際の本質は、社内の全ての人材に業務の成果を最大にしてもらうための様々な直接的な取り組みを行うことです。

「直接的な」というのは、人事制度等の仕組み作りや、組織風土醸成や執務環境の整備等の環境作りを除いた、採用、教育研修、といった施策のことです。

一般的には、広い意味の言葉で「ヒューマンリソースマネジメント(HRM)」もしくは、狭い意味で「タレントマネジメント」と言います。

「ヒューマンリソースマネジメント」は「人的資源開発」と訳されており、人的資源に関する様々な機能を指します。

一般的に、採用、配置、動機付け、報酬体系の設計、組織設計、組織開発、教育・訓練、福利厚生、労使関係、ダイバーシティなどを総合して、経営戦略との整合性のある戦略的思考で、全体をつながりのあるものして考えることを言っています。

一方、タレントマネジメントとは、企業目標達成のためのタレントを特定し、採用、配置、評価、処遇、育成などの一連の人事プロセスを通じて、潜在的な能力とやる気を引き出し、タレントのパフォーマンスを最大化する、総合的な仕組みのことを言っています。

どちらも近い概念のものですが、マングローブの「組織戦略における“人材”」は、どちらかというと「タレントマネジメント」に近い概念といえます。

経営者は、事業戦略を実行に移す上で、「適切な人材が、適切なときに、適切な職務に配置されている状態」を常時維持していなくてはなりません。

事業戦略と整合させて、「人材」に取り組んでいくためには、次のようなステップが必要となります。

1. 事業戦略から組織戦略「人材」へ落し込む5つのステップ

STEP 1事業戦略を理解する

人事部門が事業戦略の実現に必要な組織戦略(ここでは人材像)を考えられるレベルまで、事業戦略の内容を理解する。理想的には、経営会議や戦略会議等の戦略決定のプロセスに参加すること。

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STEP 2事業戦略の実現に必要な人材像をデザインする

ライン部門と人事部門が連携して、事業戦略の実現に必要な人材像を描く。必要な知識やスキル、経験、資格等を具体的に描きます。

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STEP 3必要な人材像を実現する施策を立案する

描いた人物像を実現する具体的な施策を考えます。
特に「新規事業の立ち上げ」等のように、これまでの延長上にない知識や技術等を持った人材が必要になる場合は、着実な、しかもスピード感のある取り組みが必要となります。
具体的には、採用、配置、評価、処遇、育成などの一連の人事プロセスのあり方を見直していくことです。

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STEP 4施策相互の連関を考えながら、ロードマップを設計する

いくつかの施策を考えたら、個別の施策の相互の関係を考えて、同時に実行したり、順番を考えて実行したりするものを決めます。
「リーダーシップ」「組織構造」「組織風土」等の組織戦略の他の項目との関係も重要です。(後述2.3.4.参照)
その上で、全施策のロードマップを設計し、時期や順番を考えながら実行していきます。

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STEP 5人材レビューを行なう

年に何回か、経営陣と一緒に、人材レビューを行います。これは定期的に事業戦略の進捗を振り返るのと同時に、人材関連の振り返りも行うものです。

例えば管理職で言いますと、今、どのポジションが戦略的に重要度が高く、どんな人材が求められており、その役割を担うのにふさわしいのは誰か、などについて話し合います。
また、必要な人材像の実現のための施策の実行度を振り返り、遅れや未実行があればてこ入れを行います。

2. 人事制度構築・組織風土醸成・採用・教育研修施策の考え方

マングローブでは「人間的成長」をテーマにした研修プログラムの開発や、これらの考え方を元にした人事制度構築・組織風土醸成施策の実行支援を行っています。

2ー1.適材不適所も必要

『事業戦略を実行に移す上で「適切な人材が、適切なときに、適切な職務に配置されている状態」を常時維持していなくてはならない』という経営上の課題は、
俗に「適材適所」という言葉で言われるものです。通常理想的な状態として使われる言葉です。

しかしながら、「適材適所」を適任者をポストにつける、という杓子定規に絶対的なものとしてとらえると不都合が生じて来ます。

「適材不適所」の配属が必要になる場合があるのです。

「これぞ!」という社員をリーダーとして計画的に育てたい、というような場合です。若手をひとつの部門や子会社などのトップに抜擢するなど、「まだ適任ではない」と思うようなポジションにあえて就けることをする場合があります。

これは「かなり背伸びをしなければ務まらないポジションに就いてこそ、人は成長する」という考え方に基づいています。

「適材不適所が人を育てる」場合もあるということです。

2−2.組織風土との関係

2−1.の「適材不適所が人を育てる」という考え方で、若手を抜擢したとします。

相当に背伸びしなければ務まらないのですから、当然、失敗する確率が高いわけです。

そこでは、失敗しても挽回する機会を与えること、やり直しを許容していくことが欠かせません。

威勢よく抜擢人事をしたまではよかったものの、同時に「失敗を許す風土」「やり直しを許容する風土」を創らなかったために、つぶれていった若い才能は数知れません。

2−3.リーダーシップとの関係(GOOD & MORE で育てる)

部下の成長に直接大きく影響を与える存在が、直属の上司です。社員にどのように育って欲しいかをデザインしていく上では、上司にどのように育てて欲しいかを決めることを同時に考えることが必要です。

事業戦略の実現に必要な人材像のデザインによって変わって来ますが、「理想像と3つの&」を、部下マネジメントの基本的考え方として、推奨しています。

①理想像

部下のAさんをどのように育てるつもりなのか。理想像を常に描きます。

②GOOD&MORE

部下の A さんを常に GOOD&MORE のメガネで見るようにします。

GOOD&MORE とは、うまくいっていること、強み(GOOD)に目を向けてから、さらに努力が必要なこと、弱み(MORE)に目を向ける。
GOOD と MORE をバランスよく見ることを言います。

GOOD&MORE のバランスから、①の理想像を 10 とした時現状はいくつか(現在地)を常に明らかにします。

反対語を BAD&NO と言って、駄目出し中心の(オンリーの)めがねです。

③HERE&NOW

2の GOOD&MORE で明らかになった現在地の目盛りをひとつ上げるためにできることを、一歩一歩着実に実行していくよう、上司と部下で合意している状態にします。

④MOVE&THANKS

MOVE&THANKS とは、尊敬と感謝を意味します。

上司と言えども、部下を常に「下」に見るのではなく、一人間として、一ビジネスパーソンとして、尊敬と感謝を忘れずに接することです。

MOVE は感動、THANKS は感謝です。

自分との違いを尊敬し、それを使ってした仕事ぶりに関しての感動(MOVE)と感謝(THANKS)を、伝えることを大切にします。

2−4.人間的成長という観点

顧客接点を持つ社員が、顧客から「信頼」を得ていくために必要なものは、スキルや知識ではなく、その人が醸し出す人間性であることが、多いのです。

お客様は、営業マンから「商品」を買っているように見えて、実は「その人」を買っている、とは、よく言われることです。

従って、「人材」を戦略的に考えていく時に、この人間性を上げていく、「人間的成長」という観点は、欠くベからざるものであると思います。

知識やスキルだけ教えても人間的成長は見込めません。

人生で何が大切で、どう生きるべきか、人生観から学ぶ必要があります。これを「哲学」と人は言います。

経営陣や管理職が、哲学を持って自分の人生を精一杯生きる。そして、その生き様を背景に、哲学を持った仕事ぶりをし、それを部下に背中で見せることが、最も有効な手立てなのですが、ことはそう簡単にはいきません。