企業理念再制定の3つの失敗

2015年10月22日木曜日


組織変革の流れの中で、企業理念を再制定するコンサルティングを展開することがあります。

実は、変革プロセスで再制定した企業理念には、長続きしないという傾向がありまして、取り組みの難易度は高いのです。

組織変革+企業理念再制定という組み合わせにおいては、マイナスの状況から脱する施策としての色合いが濃いですよね。

例えば、業績悪化に伴って、不採算事業から撤退し、企業規模を縮小。企業理念の内容が合わなくなっての再制定。

業績悪化の責任問題でTOPが交代し、経営陣が刷新されることに伴って、という場合。

前向きな理由でという場合は少ないですね。

このような時の企業理念の再制定においては、多くの場合次の3つの失敗を犯してしまいがちです。

1.過去及び現状の否定に偏る

再生局面ということもあって、どうしても過去の経営についての反省、時には批判、現状の否定が前面に出てしまうことになります。
度が過ぎると、創業の精神など、失ってはいけないものをも失ってしまう危険を孕んでいることを警戒しなくてはなりません。
否定したものの中に、実はコアな強みが含まれていたなどということもあり得る話なのです。

2.新経営者の思いが先行し過ぎる

再生を期待されてバトンを受け取った新経営者の張り切った気持ちが、新しい企業理念にも表れます。
当然のことながら、ここからの再生は、現場の社員たちの力の結集なくしては成し遂げることはできません。
どんなに優秀な経営者であっても、一人の頑張りなどたかが知れています。
新経営者の思い先行の独りよがりの企業理念が、そんな大切な社員たちの心を冷えさせることがあります。

3.精神論、スローガン的になる

厳しい経営状態を抜け出したい経営者の気持ちは、従業員に向かいます。
従業員への「頑張ってほしい」というメッセージ先行になってしまうと、企業理念が精神論や短期的なスローガンのようになってしまいます。
業績の急回復や、利益体質への変革といった可及的速やかに実現が必要な課題感をダイレクトに表したものにならないようにしなくてはなりません。
往々にして、社内に過度な危機感を持たせることになり、社員の活動を短視眼的なものにしてしまい、企業理念の本来の目的からかけ離れたものになってしまうのです。
どんなに状況が厳しかったとしても、精神的に追い込まれた状況にあっても経営者は冷静でなければなりません。
そんな時にこそ、企業理念の本来の姿を追求しなくてはなりません。

可能な限り、社員全員の思い、皆が大切にすべきだと思っている価値観、会社の存在意義などが凝縮されたものにする努力が必要です。

 

マングローブがコンサルティングさせていただいたS社の例を見てみましょう。
以下の、0番から5番の順番に進めて、見事な企業理念を再制定されました。

0.企業理念委員会を組織する

一人でも多くの社員に、「自分たちの企業理念」という思いを持ってもらうために、社員の代表による委員会を組織して、再制定に取り組みます。

1.社員「お題アンケート」

まずは、理念の核となるキーワードを全社員に考えてもらうことから始めました。
ワークショップ前に、社員の会社や仕事に対する思いを引き出すことによって、ワークショップの活性化が期待できます。

2.社員ワークショップ

アンケートで収集したキーワードについて、具体的なエピソードを語り合います。
このことを通じて、イメージのすり合わせを行うことができます。
部署の壁を取り払った混合チームで、自社のGOOD&MORE(うまくいっている点とてこ入れが必要な点)の分析も行い、会社の理想の状態をイメージします。

このワークショップは、①若手社員、②中堅社員、③古参社員の3つの階層に分けて行われました。
非常に有意義な場となり、参加者からも好評だったのですが、最も意義深かったのは、古参社員のワークショップによって「創業の精神の重要性」にスポットが当てられたことでした。

「イノベーション」という名の下に、状況を打破するために新しいことをやることが善で、古いことは悪のように捉えがちですが、失ってはいけないものと変えるべきものを見誤ってはなりません。

3.経営陣ワークショップ

マングローブが作成した原案をもとに、経営陣で絞込み、ブラッシュアップを行いました。
ここでは、あえて絞込み過ぎず、いくつかの選択肢のある状態での議論を行うことを意識した展開となっています。

4.理念決定会議

1.の社員の代表による委員会と役員会の合同で、最終的な決定のための議論が行われました。

5.経営者による最終決定

最終的には、細部の表現に経営者のこだわりを注入して完成としました。

 

このS社の進め方は、前述の3つの失敗のポイント

  • 過去及び現状の否定に偏る
  • 新経営者の思いが先行し過ぎる
  • 精神論、スローガン的になる

を見事に避けた成功のモデルケースと言えるもので、マングローブのコンサルタントも達成感を味わった仕事でありました。

Selective focus on the word "philosophy". Many more word photos for you in my portfolio...