強い意思としなやかさ

2015年3月23日月曜日


「感動」のある仕事をするととてつもなく幸せな気持ちになる。

先日、某社の役員会の合宿でファシリテーターを務めさせていただいた。

中長期の経営方針を役員陣で理解を深めるためのセッションである。

社長原案はあらかじめ説明されており、全員が一通りの理解をして臨んでいる。

内容を単に理解することは簡単であるが、一番大切なことは「思いの共有」である。役員陣が社員の心に響く言葉で、この方針を語ることができなければ、実行されず絵に描いた餅になってしまう。

そういう考えのもと、具体的な内容の話に入る前に「コンセプト」を語り合うことから始めることにした。

「急がば回れ」である。

「いったい何を実現するための方針なのか」「方針を実行していくことでどんな会社にしようとしているのか」熱心な議論が続いた。最初こそタイトルを変えればどこの会社にでも当てはまるありきたりな内容が多かったが、時間と共に自社ならではの独特のキーワードが飛び交うようになってきていた。

コンセプトのセッションに区切りをつけたところで、いよいよ具体的な内容に入っていく。
役員の皆さんが数チームに分かれて方針を煮つめる議論を行った上で、全体セッションが行われた。
役員から、方針を深掘る意見も出される一方で、冒頭に話し合ったコンセプトに照らして、一部方針の見直しの必要性などの意見も少なくない。

その席上で奇跡が起こった。
数グループに分かれての議論と全体セッションから、コンセプトが重要であること、用意していた方針原案とコンセプトの整合性に課題があることを感じた社長はこのように言ったのである。

「熱心な議論に感謝する。非常によいセッションになったと感じている」

「ところで当初は用意された方針書を理解してもらって突っ走るつもりであったが、本日のセッションを通じて、さらにコンセプトを煮つめること、そしてそのコンセプトに、より沿った形での方針に改めるべきだと感じた」

「諸君が合意してくれるのであれば、次回合宿でコンセプトからの根本議論をやり直したい」

取り囲んでいた役員の皆さんから万雷の拍手が起こる。

経営方針の中身に大きな齟齬があるわけではないので、ここまで皆で議論の時間を設けたのであれば、後は社長が引き取って経営企画室のスタッフにまとめさせて進むこともごく普通のことである。
しかし、社長はそうはしなかったのだ。

このような勇気ある決断はなかなかできるものではない。

社長の早い判断、潔いスピーチに大いに感服し、私は感動の中にいた。

室内に、爽やかな風が吹いたような気がした。

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※企業や個人を特定できないよう、事実に基づき一部脚色しております。