教科書通りやったとしても

2015年1月6日火曜日


「社長、企業理念なんて後回しでもいいんですよ」

この言葉を聞いたY社の社長は、意外そうに私を見つめる。

企業理念~ミッション~ビジョンを「上位概念」と呼ぶ。

文字通り、経営の最上位に位置する企業の存在理由~使命~目指す姿を明文化したものである。

組織変革の第一歩として、「まずは企業理念を作り直したい。しかも社員を巻き込んで」というお考えで、「企業理念構築コンサルティング」をご依頼下さることが多い。

しかしながら、「なぜ作り直したいのですか?」と目的をお尋ねすると「経営にとって最も大切なものであり、それを社員たちに考えさせることによって・・・」という講義を始められる。

ご依頼をいただくお客様に対してはなはだ不遜な言い方ではあるが教科書的に「まず企業理念を」と考えてもうまくいかないことの方が多いのが現実なのである。

Y社の場合に「企業理念は後回し」と考えたのは、次のような3つの理由からである。

1.社長自身にビジョンがない

社長自身が、これまでのキャリアの延長上で今の事業を手がけているだけで、将来に渡って世の中に提供していきたい価値や自社の有姿についての考察が、あまりされていない。

その状態で、社員に「考えさせる」という言葉使いで 「丸投げ」したとしてもうまくいかないことは目に見えている。

何の方向性もない議論は、十中八九空中分解する。

2.ワンマン経営で考える文化がない

創業社長の超ワンマン経営である。

経営方針はもとより、業務のかなり細部まで社長の目が光り、社員には「言われたことを忠実に遂行する」体質が染み付いている。

ワンマン経営の良し悪しは、また別の議論であるが、この「言われたことを忠実に遂行する」ことの重んじられる風土において、「お前たちで企業理念を考えよ」という企画は唐突さを持って受け止められる危険がある。

「企業理念の構築に関わることを通じて、考える風土を醸成する」ということも、言葉としては成立しているが、現実的とは言えない。
ともすれば、机上の美辞麗句を並べる作業になってしまったりする。
「考える文化」は、仕事を通じてしか作ることができないのである。

3.管理職のマネジメントレベルが低い

Y社は、社員が定着しない、という問題を抱えている。
実は、「ビジョンが曖昧でかつ超ワンマン」という社長自身の問題もさることながら、管理職の問題も小さくなかった。

・BAD&NO体質
・虎の威を借る狐
・年功序列

の3点である。

BAD&NO体質とは、管理職が「駄目出しが自分の仕事と思っている」ということ。
「あれも駄目、これも駄目」という姿勢が、部下のやる気と可能性をつぶしている。

虎の威を借る狐とは、社長の威光を笠に着た言動の管理職ということ。
自分の言葉で語ることは少なく、社長の言葉をコピペしている。

年功序列とは、文字通り実力度外視の人事。

これらの、「社長自身が経営をよく考える」「考える文化の下地を作る」「管理職のマネジメントレベルを上げる」といったことが、企業理念の構築より優先されることが多いというのが、組織変革の現場の現実である。

 

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※企業や個人を特定できないよう、事実に基づき一部脚色しております。