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経営と組織戦略

事業戦略の実現には組織戦略が不可欠である

経営戦略の重要性が広く認識されるようになりましたが、その内容は「事業戦略のみ」に留まっていることがほとんどではないでしょうか。

事業戦略を必死になって立案し、その実行の旗振りもまた一生懸命行う。一方で、事業略を実行する肝心の「人と組織づくり」についての戦略は考えられていないという企業が驚くほど多いものです。

経営戦略は「事業戦略と組織戦略の両輪」です。

将来のビジョンをもとに、それを実現するためには、どのような事業戦略が最適かを考えることが重要です。そして、その事業戦略を達成するためには、いかなる能力を持った社員が何人くらい必要なのか。その前提として、個々の社員の能力や社員数だけでなく、どのような組織構造であれば、組織・社員の強みを最大限発揮できるのかを考える必要があります。時には、企業文化さえも変化させていく必要があるかもしれません。

事業戦略と組織戦略の関係において主従関係はありません。

現状の組織や人に優位性があると感じた場合には、それらを活かした事業戦略をとることも大切な視点です。(例えばスポーツの世界では、この流れで戦略を考える方が一般的と言えるでしょう)

ところが、多くの企業の人事部門において、自社の将来の事業戦略に通じている人は極めて少なく、直近の採用活動や当面の研修スケジュールを回すことで頭がいっぱいになっているようです。会社としても、経営戦略を決める場に人事の席がなかったり、人事担当役員の発言力が弱いという企業も少なくありません。

これからの人事部門は経営全体を見定め、「人事部」から「組織戦略部」などの名称に変更し、守備範囲を広げて考えるべきでしょう。
事業戦略と組織戦略を「一対」に考えることで、スピード感は大きく変わってきます。

「大変な労力を費やして策定した事業戦略だが、なかなか思うような進捗に結びつかない」という経営者の声を聞くことは珍しくありません。そういった企業の経営戦略には組織戦略という視点が抜け落ちていることがほとんどです。

事業戦略が変われば、同時に組織戦略も見直す。

組織に大きな変化がある際には、事業戦略に穴が空かないかを確認する。

こういった両輪思考が経営には不可欠といえます。

経営とは何かを考える

「経営」

企業に勤める方であれば、日々直面している言葉であり、それは学校やNPOのような組織であっても考える必要があるものです。

では、この「経営」というもの。

日々耳にしてはいますが、「経営する」とは一言で言うと何なのでしょうか? そして経営者とは、結局何をしているのでしょうか?

多くの経営書やドラッカーなどの経営学者は様々な表現を使って説明していますが、 最小単位に突き詰め、シンプルに定義をすると、

「意思を持って計画し実行する」

と言えます。

この定義は、3つの言葉から成っています。

意思を持って/計画し/実行する

これら3つのうちのどれが欠けても「経営」とは言えなくなってしまいます。

・意思を持って

かつて「経営とは、ヒト・モノ・カネの最適な配分を決定すること」と言われていました。しかし、今やこの定義を聞くことはなくなりました。経営の要素はこの3つだけではない上に「何をもっての最適なのか」ということが重要であるためです。

「経営」という多くの意味を含む言葉の定義は難しいものですが、この「何をもって」というのが、まず大事なキーワードなのではないでしょうか。

言い換えると、これが「意思を持つ」ということです。

目的地がないままに進み続けることは、社員の疲弊感を生んでしまいます。うまくいっている時には感じないものですが、一度経営が悪化すると“出口のないトンネル”に入り込んだように感じます。

  • 過去のトレンドの延長というだけの「計画」
  • 部門の申告を寄せ集めただけの「計画」
  • 部門長以下に丸投げ状態の「実行」
  • 結果としてのライバル企業への「追随」

これらが、経営者の言動から見られるようであれば、「意思を持っていない」経営である可能性が高いのです。

また、経営者だけでなく、社員から

  • 「社長が言ったから」「上司が言ったから」を行動の拠り所にする
  • 計画の背景も意味も自分の頭で考えない
  • 状況の変化があっても疑問を持たない

ということが感じられるようであれば、
「意思を持たない」ことが組織的に蔓延していると言えます。

・計画し

計画をしないと、どのような状態になるか。

計画のない経営は “その日暮らしの迷走経営”“根無し草経営”と言えます。

社員からすると、すべきことが分からなくなってしまい、これも徒労感が出てしまいます。

目的地が決まったら、どのルートで行くのか。
それが明確になることで、自信を持って一歩目を踏み出すことができます。

しかし、だからといって、経営者が計画を練りに練りすぎてはいけません。
実行する現場の社員が、「言われたことだけを行う」受け身体質になってしまうためです。

計画は不変なものではありません。実行していく中で、状況変化に応じて都度計画も練り直す必要があります。そしてその変化を感じるのが、現場のメンバーです。

計画を立案するプロセスに現場のメンバーも関わることで、そこで得た思考や情報が計画変更のときにも大いに役に立ちます。

そして、何より「自分たちで立てた」という当事者意識が実行力を高めるのです。

・実行する

「意思を持って計画したこと」と実行が伴わない場合、これは言うまでもないかもしれませんが、俗にいう“絵に描いた餅”と言えます。

計画を、実際に「食べられる餅」にしていくのは実行力です。ビジネススクールや様々な書籍で、事業戦略の描き方などが学びやすくなりました。しかし、昨今の多くの企業で抱えている問題は、実行力の欠如です。決めたのになかなか始められない、中途半端に辞めてしまうことが多い、といったように。

実行するのは現場の社員です。
つまり、実行力を高めていくには、人や組織に変化が必要であると考えられます。
経営における組織戦略や人事部門の役割への重要性が高まっていると言えるのではないでしょうか。

最後に・・・。

世の中のブームに便乗し、他社の「モノマネ」による経営を行っていると、いざうまくいかなくなった際に経営者が自分で手直しができないことは明白です。

また、経営企画本部などが作成した場合には、うまくいかなくなった際には一から検討が始まり、時間がかかります。

一方で、戦略に意思を持っていれば、やり直しも意思を持ってできます。

「意思を持って計画し実行する」

業種業態には関係なく、このどれが欠けても経営とは言えないのです。

勝てる戦略「3つの条件」

「戦略」とは何か。

考えてみましょう。 「戦略」とは「計画と実行を“勝てる”ものにする」ためのものです。

“勝てる”とは、ライバルに勝つということです。

勝てる戦略には次の3つの条件が存在します。

  • 他がやっていないことをする
  • うまくいっていることを見つけ、それを増やす
  • うまくいっていないなら、違うことをやる

の3つです。

・他がやっていないことをする

「差別化戦略」と言い換えると、よく聞く言葉かもしれませんし「当然のことではないか」という反応が聞こえてきそうです。

しかし実際には、本当の意味での差別化ができている企業はどれほどあるでしょうか。

「差別化」という言葉自体が適切ではないのかもしれません。
「うちの商品は、他社よりもこれだけ早くできます、安くできます」
このような「差」というのは、実はそれほど大きなものではありません。

重要なのは「差」ではなく「違い」なのです。

ブルーオーシャン戦略という言葉が数年前に出てきました。
あれこそが「他がやっていないことをする」ことの最たるものと言えます。

業界においてどう差別化を図るかではなく、新しい業界を作ってしまうこと。
それによって、新業界でのリーダーカンパニーになっていくという戦略です。

・うまくいっていることを見つけ、それを増やす

ピーター・ドラッカーは、経営について次のような表現をしています。
「企業経営のエッセンスは、何かに『卓越』することと、『決断』することである」

「卓越」と「決断」というたった2つの言葉に凝縮される表現ですが、まさにこの「卓越」という視点が重要です。平易な言葉に言い換えれば「強み」です。

極論すると、経営戦略とは「強みを活かし、いかに戦うか」と言えるかもしれません。

しかし昨今、あらゆる業界で「他社にできて、自社にできないことがあるとお客様から選ばれない」という意識が先行し、“弱み潰し”の戦い方になっています。

結果的に自社の強みを失わせてしまっているように感じられます。
それによって、業界全体がコスト競争に陥ってしまっていることも多いのです。

また、縦割り風土が強まり、ある部署でうまくいっていることが、他に共有されずにいることも多くあります。

1つの強みを活かすと同時に、それを活用できる機会を増やすということも忘れてはならない視点です。

できていないことばかりに目を向けると、その対応はどうしても後手後手の策になってしまいます。

「うまくいっていることに目を向け、増やす」という姿勢が、次第に「強み」「違い」となっていきます。

・うまくいっていないなら、違うことをやる

極めて当たり前の事を言っていると感じると思いますが、これができていない企業や個人が思いのほか多いのです。

その方法が唯一無二の正しい方法であると思い込んでしまい、新しい方法を考える姿勢を持てないのです。

特にこのような状況を多く目にする職場の一つが営業部門です。成果が出なかったとしても、変えるものは「頻度と時間と気合」ばかりです。それでは大きな変化は見込めません。

このようになってしまっている背景には、

  • これまでの成功体験から、新しい方法に踏み出せない
  • これまで投資してきた時間や費用を考えると切り捨てられない
  • これまで続けてきたことだから、やることが当たり前になっている

といったことが挙げられます。
気持ちはよく分かるのですが、ある種の思考停止状態にあるといえます。

うまくいっていた戦略もそれが永続することはあり得ません。しかし環境変化の激しいと言われている現代においても、うまくいっていないことに目を向けられない、見切りをつけられないことが多いものです。

ご紹介した3つの条件は戦略を立てる上で重要なポイントです。自社の戦略を立案する際には、この3つの条件をチェックポイントにしてみてはいかがでしょうか。

組織戦略の重要性

社員を選別採用し、配置、教育、評価、処遇をするという一連の人材フローで、
人事戦略が考えられることがあります。

これは俗に「人材フローマネジメント」と呼ばれている考え方ですが、
この流れだけで、人事施策を考えてしまうと、大きな問題が生じてきます。

まず、上記の人材フローではそれぞれが一つの仕事として成り立ってしまうので、
一般論的な「かくあるべし」が感覚的に存在しているということ。

歴代の人事部長や、担当者から受け継がれてきた、 「採用はかくあるべし」「教育はかくあるべし」という、ある種伝統に近い考え方ややり方が存在していたと思います。

本来の人材マネジメントは、「採用」「教育」「評価」と独立したものとして受け継いでいくのではなく、目的として考えるべきは、企業としての本業である「事業」を戦略に基づいて上手に回し、結果(業績)を出していくための、人材や組織の有り方を考え実現し、結果に責任を持って行くことが正しい姿です。

また、「人材フロー」を業務の考え方の中軸においてしまうと、「個」を対象として仕事をしがちになります。しかしながら、社員が一人で仕事をして、業績を上げていくということはほとんどなく、何人かのチームが基本となり、そのチームがいくつか集まって上位のチームとなり、組織として役割を分担して結果を出していくことが現実です。

重要なのは、本来は業績につながる組織のあり方、つまり、「事業戦略を実現していくためにふさわしい組織のあり方」を戦略的に考えた上で、そのあり方に基づいて人材マネジメントを考えることです。

マングローブでは、組織を運営していく際に重要な次の4つの観点で、自社の組織戦略を考えています。

≪リーダーシップ≫

経営者自身の組織への影響の与え方(指示/委任のバランスなど)は、 どのようにあるべきか。 現在の幹部を後継者としてどのように育てるか。 今後の経営の核になる人材をどう位置づけ、どう育てるかなどについて決め、 進めていきます。  

≪組織構造≫

事業戦略上、どのような組織の形が最適かを決め、組織化します。 とりわけ重要なのは、経営者が柔軟な舵取りを行うためには、 どの組織単位で利益を見るかです。

≪組織風土≫

事業戦略を実現できる組織となるための風土を作り込んでいきます。 組織風土は、各職場の管理職による影響が大きいため、管理職自身のマネジメント変革をどのように行うかを考えます。同時に、人事部などが主導して、全社の風土に影響を与える施策を考え、推進していきます。  

≪人材≫

事業戦略を実行する戦力である社員に、どのような「役割・能力・意識」が必要かを考えます。そして、現実とのギャップを埋めるためには、どのような「育成・採用・配置」を行うかなどを個別に考えるのではなく、評価や処遇なども含めて、全体像を描きます。

マングローブの組織戦略
参考:マングローブの組織戦略

マングローブが提供している組織戦略コンサルティング

人事部門の本来の役割とは

戦略の実行力を高めていくには、人や組織に変化が必要であると考えられます。

そのため、経営における組織戦略や人事部門の役割への重要性が ますます高まっていると言えるのではないでしょうか。

それでは、その戦略の実行をつかさどる「人事部門の役割」とは何か。

考えてみましょう。

  • 良い人を採用すること
  • その人を辞めさせないこと
  • 社員の能力を活用すること、能力を伸ばすこと
  • 働きやすい職場を作ること

これらも重要な役割ではありますが、人事部門の方に持っていただきたいのは 「自分たちは戦略部門である」という役割認識です。

組織とは、ある目的を達成するために集まったものであり、企業も多分に漏れません。 そしてそこには、目標があり、目標を達成するための戦略があります。

実務として、採用活動・研修実施・評価制度の運用は他に委ねられないことですが、 何をするにも「戦略」を頭に入れた上で取り組むこと、さらに戦略自体を考えることも 自分たち(=人事部門)であるという認識が重要です。

では、戦略部門として、人事部門は何をすべきか?

実務としては多岐に渡りますが、忘れてはならないのは、

  • 戦略を描く 
  • 現場と経営をつなぐ 
  • 現場の実行支援を行う  

の3つです。

・戦略を描く

経営者が描く戦略の多くは事業戦略に偏っており、組織戦略への視点が欠けています。

実行力の高い戦略とするためには、事業戦略と組織戦略を一対に考える必要があります。 まさにその戦略を描く部分で、人事部門は提言していくべきであり、組織の現状を踏まえて事業戦略立案にも関わっていくべきです。

事業戦略と組織戦略を一対に考えることで初めて、 採用・配置・育成・評価・処遇などの各人事施策に一貫性が出てきます。

理想とする組織風土づくりのためには、経営者のリーダーシップのあり方を変えてもらう必要があるかもしれません。組織の現状を踏まえながら、会社方針の転換という進言も求められると言えます。

・現場と経営をつなぐ

事業戦略と組織戦略は一対のものであり、どちらかに主従関係があるわけではありません。

事業戦略を実現するための組織戦略を描くこともあれば、 組織の現状を踏まえて事業戦略を描くこともあります。

特に、人や組織の特性というのは一朝一夕にできるものではないため、 模倣の難しい「強み」となります。

戦略を描く際には、現場の声や仕事の進め方といった組織の現状を把握しなければ、 実行性の高い戦略を描くことはできません。

有能な経営者ほど周囲をYESマンにしてしまい、かつ自分の能力をスタンダードとして考え、描いた戦略が実行されないことにもどかしさを感じます。

戦略部門としての人事は、現場と経営をつなぎ、 経営者の意思決定をサポートします。

そして、その役割は一方通行ではないことは周知のことです。 現場の状況を経営に伝えると同時に、経営の意向を現場に伝えることが求められます。 直接伝えることもあれば、様々な施策に落とし込むことによって伝えることもあるでしょう。

その際、決して双方の“御用聞き”となってはいけません。

経営者に「現場はこう言っています」と声を伝えるだけでは、 判断材料を増やすだけで、逆に惑わせてしまうでしょう。

また、現場に対して「◯◯と社長は言っているからやってください」と 伝達するだけの役割では、意思のない人事として求心力を弱めてしまうでしょう。

現場と経営を繋ぐにあたっては「社長になり代って」という姿勢が不可欠です。

・現場の実行支援を行う

戦略は立案して終わりではありません。 実行して成果に結びつけることが重要であることは言うまでもないでしょう。

しかし実際には「方針・戦略を伝達して、結果を待つだけ」という経営姿勢が少なくありません。時には目標だけということもあり、戦略が示される企業はまだ良い方かもしれません。

企業成長を目指す経営戦略は、現状維持ということは少なく、 時に抜本的な変革を求めることがあります。

そういったものは現場の反発も多く、方針を丁寧に説明するとともに、 実行に移しやすい体制づくりやフォロー施策も考えておくことが大事です。

経営者とのコミュニケーション強化施策や、戦力を最大限に発揮する人員配置、 部門に横串をさす役割配置、マネジメント強化のための研修などが考えられます。

さらに、社員個々の心身のフォローも人事部門には求められます。

本来ならば、それらは各職場のマネジメント層の役割なのですが、 客観的な立場だから分かることやアドバイスできることがあります。 社員にとっての「駆け込み寺」となることが必要です。

また、そのような取り組みが部門の横串施策にもなり、 経営と現場をつなぐことにもなっていきます。