経営を俯瞰し意思を持つこと

2017年1月31日火曜日


【詳細に迷い込む】

10数年前に「詳細に迷い込む」という言葉に出会いました。

ある外車ディーラーさんの、全国のセールスマンの3年がかりの教育を担当させていただいた時のことです。

ロープレや、セールスマンのキャリア面談や、商品知識テストなどを組み合わせたカリキュラムでセールスマンの総合力を見極め、ポイントを絞り込んで教育していくものでした。

売れないセールスマンに共通していることがひとつありまして、それが「詳細に迷い込む」ということでした。

全国のディーラーを訪問して、ショールームや会議室を会場に審査カリキュラムを一日展開して、最後に夕方営業本部長さんや部長さんに対して、審査結果のフィードバックと教育ポイントのディスカッションをするのですが、一番多用されていた用語が「詳細に迷い込む」でした。

「詳細に迷い込むセールスマン」とは、聴くよりも一方的に話してしまい、しかも内容がお客様の関心を度外視した商品の「詳細」説明なのです。

売れているセールスマンは、商品の詳細の前に、
お客様のこと(ニーズでもなくその前にお客様自身の知りうる限りの情報)をよく知り、時間をかけてセールスの「ストーリーの全体像」を描くことに長けていました。

このところ、色々な会社の経営者の方からのご相談を受けていて、あるいは幹部や管理職教育の研修プログラムなどを実践していて、この「詳細に迷い込む」という言葉がよく頭に浮かびます。

経営全般が俯瞰できていない方が、実に多いのです。

「課題を解決することが会社をよくする道」と思い込んではいけません。

会社には放置してよい課題も山ほどあるのですから、個別の課題で慌ててはなりません。

個別の課題が針小棒大に感じて右往左往している経営者がすべきことは、まずは経営を俯瞰してみることです。

【経営を俯瞰する】

組織変革のご相談を受けて、個別課題の詳細に迷い込みそうになっている経営者の方には、まずは俯瞰の努力をしていただいています。

主には次の3つの俯瞰をしていただいています。

1.ビジョンから過去までの俯瞰

会社経営には流れが必要なんですよね。

5年後、10年後、20年後に会社をどのような状態にしたいのか?

現状分析を踏まえて、おおまかにどのようなステップを踏んでいけばよいのか。

細かいことは別として、大きな流れを見出します。

将来への思いがなかなか描けない場合には、過去を振り返ります。

・輝ける瞬間は?
・会社のターニングポイントは?
・うまくいっている時には何が強みで何が弱みで何をしたのか?

ビジョンは必要ないという経営者の方がいます。

特にIT系に多いですね。

「今野さん、我々の業界は一ヶ月先もどうなっているか分からないのですよ」

この頃の経営者は判で押したように言いますが、それと経営ビジョンがあるかないかは関係がありませんね。

経営のビジョンというのは「将来予測」ではなく「経営者の意思」ということなんだということは、重大なポイントです。

意思があるかないかは、うまくいかなくなった時の落ち方に影響が出ますよね。

2.社内の各機能の俯瞰

ご紹介を受けて経営者の方にお会いすると課題表をお持ちになる方がいらっしゃるんですね。

しかも、部門ごとに非常に詳細に分析されているわけです。

この実によくできた「課題表」が詳細に迷い込むことに拍車をかけています。

部門ごとにはいいのですが、部門間の連関、流れが俯瞰されていない場合が多いんですね。

よく言われる「サプライチェーン」だとか「価値連鎖」だとか、呼び名は何でもいいと思うんです。

会社の組織というものは、経営者が実現したいことを仕事の流れに応じた部門の役割分担で動いているものなのですから、大本の目的に沿っていることと、流れができていることがともて重要だと思うんです。

社内の各機能(部署)の大きな流れの中で俯瞰してみることもとても重要です。

3.GOOD&MOREの俯瞰

もうひとつの俯瞰は、マングローブの馬鹿の一つ覚えのようになっていますが、GOOD&MOREによる俯瞰です。

上に「課題表」をお持ちの経営者がいるということを書きましたが、「課題」「問題点」に目を向けて、それを解決すれば会社がよくなると思い込んでいる経営者は多いですね。

どうしても放ってはおけない課題(ボトルネック)を取り除くことは急いだほうがよいのですが、しばらく放っておいてもよかったり、無視してもよい課題も片っ端から解決しようと幹部にも発破をかけてやっきとなっている方もいます。

ドラッカーは「強味にフォーカスせよ」と言いましたが、「課題表」を充実させるのではなく、GOOD&MOREで「うまくいっていること」「強味」と「変えなくてはいけないこと」「さらにやるべきこと」「弱み」とを並べて見る(俯瞰する)ことがとても重要だと思います。

【詳細を我慢する】

我慢強くないと経営者は務まりません。

今日のテーマで言えば、個別の課題を夢中になって解決したくなる気持ちを我慢すること、詳細を我慢することですね。

もう一つついでに言いますと、社員一人ひとりに思いを持つのは必要なことなのですが、経営者たるもの、全社員と直接細かいやり取りをするのはご法度ですね。

これはいけません。

よく、社員が直接社長に色々言ってくるのを「自分は社員に人気がある」と勘違いして、事業部長や部長や課長をすっ飛ばして、社員一人ひとりとの個別コミュニケーションに努力する方がいます。

時にはうまくいっているように見えることもありますが、長い目で見るとあまりよくありませんね。

どんな時にも、自分の「目の前の人を大切にする」ことが先でなくてはなりません。

社長の目の前にいるのは、秘書もそうですが、取締役であり、部長であるはずです。

秘書と取締役と部長ときちんと向き合って、人間的に接し、大切に、経営を俯瞰することを共にすることに一生懸命になる。

それをしていると、自分が直接社員にちやほやしなくても、取締役や部長や課長が社員を大切にしてくれるはずです。

見ていますと、社員に人気取りをして、直接向き合うべき取締役や部長をないがしろにしている経営者もいます。

家庭でもそうではないでしょうか?

子供にベタベタする気持ちも分かりますが、ご主人が大切にしなくてはいけないのはまずは奥さんですね。

奥さんを思いきり大切にしていれば、奥さんがお子さんを大切にしてくれます。

何より、奥さんを大切にしている姿を、お子さん方もよく見ているんじゃないでしょうか?

最後に話が脱線してしまいましたが、今日一番言いたかったことは、「詳細に迷い込まず」「いくつかの角度から経営を俯瞰してみて」「意思を持って経営すること」が経営者に必要だということです。

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今野 誠一Seiichi Imano
企業経営にあたりつつ、自らも第一線のコンサルタントとして、組織変革コンサルティング、経営幹部教育プログラムや管理職研修のファシリテーション、企業理念構築や経営ビジョン構築ワークショップのファシリテーションなどを担当している。