粘り強さが最も大切なこと

2016年11月4日金曜日


【途中で頓挫する理由】

組織変革コンサルティングの仕事を18年やってきました。

最も痛切に感じていることは、粘り強い取り組みが必要だということです。

 

よく「成功の鍵は、成功するまでやめないことだ」と言いますが、組織を変革する時には正に必要な言葉ではないかと思います。

変革に着手して、思い通りに成就している企業は半分もないと思います。
半分どころか、2割か3割という説もありますね。
どこの説かはわかりませんが、何かの記事に書いてありました。
当てにはならないのですが、感覚値はそんなものではないかと思います。

 

途中で投げ出すことについては、3つのポイントがあると思うんです。

●経費削減の波に飲まれる
●途中から営業優先
●隗より始めない

 

先日、私がコンサルタントとして支援しているある変革プロジェクトのメンバーの方から、こう切り出されました。

「経理部の方針で、コンサル料の削減が決まっているんですが、お願いできますか?」
こうも言われました。
 
「何をしてくれて、どんな成果物が手に入るかを明解に書いた書類を出してください」
 
こういう「機械的」なことは、ごく普通に行われています。
 
プロセスは省略しますが、あれやこれやをやっているうちに、コンサルティング料は3割削減になりました。
 
 
プロジェクトメンバーが、変革のためのコンサルティング料を「経費」ととらえ、成果物を自分で考えることなくコンサルタント側に出させる。
 
物を買う感覚ではうまくいかないと思うんですがね。
 
一緒になって結果を出したいところですが、どうしても「何をしてくれるの?」「成果物は?」となってしまいますね。

こういうことを言われることもよくあります。
 
「(業績が悪化していて)営業のテコ入れに忙しくて前回の会議からあまり進んでいないんだよ」
 
「優先順位を元に戻してはダメですよ。元の木阿弥ですね」
と言うと、返ってくる言葉は・・・

「社長がとにかく業績の回復が優先だって言うんで・・」
 
結局、今まで通りの、「数字」「数字」の大号令で、やらされ感で戦場に突っ込んでいくばかりです。

ドリフターズのいかりや長介ではないですが「ダメダコリャ」です。
 
 
 
こういう言葉もしょっちゅうです。
 
「今野さん、現場がなかなか本気で変わろうとしないんですよ」
 
そのように管理本部のプロジェクトメンバーがおっしゃいますので、訊いてみます。
 
「管理本部内はどのくらい変わりましたか?」

 

返事は「・・・・」

 

当然こう言います・・。

「本部がまず見本とならないと話にならないでしょうね」
すると、こう返ってきました。

「本部が何かやると、現場から“本部は暇だからそんな悠長な取り組みができるんだろう”って言われちゃうんですよ」
一にも二にも、変革をミッションにしリードする本部の「隗より始めよ」の姿勢がないことには話になりません。

それでいて、やっていることを伺うと、色々なことを変えていくことを社内に徹底していく方法は、ことごとく「通達」なのです。

現場の皆さんに、当事者として、変革プロセスを腹落ちして取り組んでもらうためには、肉声が必要ですし、本部の本気度が必要だと思いますが、「通達」で何を変えようというのでしょうか。

なんだか、すっかり愚痴話になってしまいました。

 

言いたかったことは「粘り強い」取り組みの必要性についてでした。

経験上、本部に変革の守り神のような存在の人が必要です。

それは社長が一番いいのですが、管理本部長でも総務部長でも人事部長でも経営企画課長でもいいと思います。

ブレずに、地道に、試行錯誤を繰り返しながらも続けていると、必ず社内に賛同者が現れて、小さな変革の火があちこちに灯ります。
この小さな火は、なかなか表に見えてこないので厄介なのですが、確実に存在します。

その小さな火が、突然大きな火に変わる瞬間がやってきます。
組織変革の取り組みにも「ティッピング・ポイント」というものが存在するのだと思います。
 
 
【ティッピング・ポイント】

ティッピング・ポイントというのは、あるアイデアや流行もしくは社会的活動が、敷居を越えて一気に流れ出し、野火のように広がる劇的瞬間のことです。

この言葉は2000年に、ワシントンポストの記者であるマルコム・グラットウェルが書いた「ティッピング・ポイント」という本で話題になった言葉ですね。

売れなかったモノが爆発的に売れたり、犯罪率が著しく増減したりといった謎の多い現象を解明しようとした本ですが、とても示唆に富んでいると思います。

 

たとえば、ニューヨークの犯罪発生件数が5年間で64.3%もダウンしたケースなどを例にとって説明します。

ここでは、荒廃していた地下鉄をクリーンアップし、無賃乗車を厳しく取り締まったことにティッピング・ポイントがあったとみます。

あるいは、販売不振だったシューズの爆発的な流行、テレビ番組「セサミ・ストリート」の成功などの現象を読み解いています。

ごく小さな原因が感染的に広がり、劇的な変化を生むというのです。

 

ティッピングポイントには三つの原則があります。

1.少数者の法則
2.粘りの法則
3.背景の力

 

の3つです。

「少数者の法則」は、その感染をスタートさせるには、最初は少数の特別な能力を持った人達が導火線になる。

「粘りの法則」は、記憶に粘りつくものが感染しやすい、というルールである。

「背景の力」は、流行感染には環境要因が不可欠だという法則。

 

この本を読みながら私は、この三つの法則を始め、組織変革の取り組みにも通じるものを感じ、非常にインスパイアされました。
 
すぐそこまで来ているティッピング・ポイントを信じて、変革の歩みを粘り強く進めていきたいと思います。

※写真の書籍の左側は最初の版で、右側は「新装版」です。
 
book


今野 誠一Seiichi Imano
企業経営にあたりつつ、自らも第一線のコンサルタントとして、組織変革コンサルティング、経営幹部教育プログラムや管理職研修のファシリテーション、企業理念構築や経営ビジョン構築ワークショップのファシリテーションなどを担当している。