人事部門に必要なセンスとは9(プロ意識)

2015年7月28日火曜日


今回は人事部長時代の部員の教育について振り返ってみようと思います。

人事部員の教育については、次の3つの意識を持って仕事をするように要望していました。

・問題意識
・当事者意識
・プロ意識     の3つです。

 
問題意識とは、仕事上の「問題を問題だと感じるアンテナ」のことですね。

このアンテナには3つの種類がありますね。

①「なぜ?なぜ?」と疑問を持つことから生まれる問題意識

②不便や不満が原動力となる問題意識

③理想を追求していく姿勢から生まれる問題意識

当時の人事部には、採用業務が大きな柱になっていたことから若い社員が多く、①と②については非常に高いレベルで業務上の問題意識を持って取り組んでくれていたと思います。

一方で③の理想を追求していく姿勢は、非常に前向きでいい意味で素直な社員が多かったので、人事部長の私が持っていきたい理想の方向を理解し、努力してくれていたと思います。
ただ、この点はもう一度やり直せるとしたら、部員も巻き込んで「オレたちの(私たちの)考える理想の人事部」というものを一緒に考えることをしたいとは思います。

 

当事者意識とは、仕事に主体性を持って、全て自分のことだと思って取り組む意識、のことですね。

この当事者意識のバロメータは、できない言い訳の量であると私は思っています。

当事者意識の高いメンバーは、「どうしたら自分の責任を果たせるか」を考え抜いて、あの手この手を考えます。

しかしながら、当事者意識の低いメンバーは、壁に当たるとそれがすぐにできない理由に転換され、できない理由の説明をさせたら天下一品に社員になってしまいます。

「会社の方針が・・・」「上司が・・・」「先輩が・・・」「仕事量が・・・」「環境が・・・」とできない理由はいくらでも挙げることができます。

この点においても、当時の人事部員たちは、当事者意識の塊のような軍団で、とんと「言い訳」は聞いた記憶がありません。

その点では、非常に恵まれた人事部長だったように思います。

 
さて、もう一度やり直せるとしたら、注力したいのは、最後の「プロ意識」です。

問題意識、当事者意識同様に、定義をすることから話しを始めたいと思います。

プロ意識の定義は様々考えられますが、私の定義は次のようなものです。

「一定のクオリティーを保証した成果を上げ続けるために、自分を磨き続けることに責任を持つこと」

この中の「自分を磨き続ける」とは、人には真似のできない技術、能力、知識を身につける努力をすることです。
今野誠一率いる当時の人事部は、このことについては、上の「問題意識」「当事者意識」に比べて、甘かったと認めざるをえません。
人事部門のプロ意識が低くなる要因はいくらでも見つけることができます。

 

第一に、実に内弁慶な仕事であるということです。

内弁慶とは「家の中でばかり強がって外では意気地のないこと。そういう人」という意味ですね。

人材採用の仕事以外は、外部との競争にさらされることもほとんどなく、社内では「人事」という特殊(実は特殊感は無いほうがいいのであるが)なポジションにあるために、社内では無意識のうちに偉そうな存在、特殊な部署になってしまいます。

 

第二に、結果の分かりにくい仕事で、クオリティーの判定がしにくい部分が多いということです。

採用に関しては、採用人数だけをとれば目標人数を採用できたかどうかは簡単に判定できますが、人材のレベルについては実に主観的なものであります。

人材教育となるとますますやっかいで、業績への直結感が薄く、ほとんど判定ができない状態です。

人材配置などの仕事となると、理屈を越えた力関係や思惑もからんだ、世界となってきますね。

組織風土醸成など、目に見えない範疇になると、実に曖昧模糊として、ほとんどお手上げ状態になります。

 

第三に、第二のこととリンクしてくることではあるのですが、プロとして何が必要とされるのかが曖昧な仕事だということです。

業務リストにすることは簡単にできるのですが、その内容について具体的にイメージできるものにして、さらに必要な技術や能力や知識に落とし込むことは、かなりの覚悟を持ってしないと簡単にはできません。

意識を高く持たないとアマチュアレベルでもそれなりに済んでしまう怖い仕事なのです。それなりに済んでしまっているのは、向いている方向が「社長」であることが多いからなんですね。

社長にさえOKをもらえればことが済んでしまう閉鎖性がレベルを低いものにしてしまいます。社長が商売にも、人や組織のことにも通じたスーパーマンであればよいのですが、そんな人はそうはいません。

これまで言って来たことと重複しますが、人事部門が向く方向を「社長」ではなく、「事業」に求めることが第一にすべきことですね。

事業の戦略を着実に実行していくための組織戦略をきちんと持って、その戦略に基いて、人事部門の役割を再定義することで、人事部門に働く人のプロフェッショナル像をクリアにすることです。
それをした上で、もう一度人事部長をやるとしたら、次の3つの観点で人事部員に向き合い要望していくと思います。

1.基礎訓練を怠りなく

プロが大切にしていることは、どの世界でも基礎訓練ですね。

①人を観る目
②組織の考え方
③ 聴く力、書く力、話す力
・・・etc
必要な基礎訓練は、人事部門の置かれた状況と一人ひとりによって決めて習慣に落としていくことです。

2.他流試合を当たり前に

社内で偉そうにしていてもしようがないですね。
他社の、可能であれば他業界の人々との接点を豊富に持ち、自分たちのやっていることが当たり前だという凝り固まった感性を打破していくことです。

3.あくまでもプロとして扱う

これは、最も大切なことと言ってもよいのですが、メンバーを現時点において、すでにプロフェッショナルとして扱うということです。

人事部長から見れば、人事マネジャーや、ましてや部員はレベルが低く見えるのはやむを得ないですね。人事部長であっても一人間として見れば永遠に未完成で、成長を続けていく存在です。

部下が自分と同じレベルにならなければ満足しない、認めないという上司では、その人の部下でいる限りプロフェッショナルにはなれないことになります。

一度、目の前の部下を、現時点が最高という見方に切り換えて、プロフェッショナルとして扱ってみることです。

・「お前はどう思う?」と、本人の考えを尊重する
・一人間として部下の尊敬できるところにスポットを当てる
・任せる

新人はいつまでも新人扱いしていると新人根性から脱却できないし、子供はいつまでも子供扱いしていると大人になれないし、ビジネスマンはいつまでも半人前扱いしているといつまでも一人前になれないというわけですね。

さてさて、こうして人事部長当時を振り返って書いていて気がついたのですが、今現在の立場においても大切な内容ですな。

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今野 誠一Seiichi Imano
企業経営にあたりつつ、自らも第一線のコンサルタントとして、組織変革コンサルティング、経営幹部教育プログラムや管理職研修のファシリテーション、企業理念構築や経営ビジョン構築ワークショップのファシリテーションなどを担当している。