人事部門に必要なセンスとは8(裁判官からenergizerへ)

2015年6月30日火曜日


3回のつもりでスタートした「人事部門に必要なセンスとは」シリーズがなんと今回で8回目になりました。

「読み応えがある」「生々しくて、身につまされる」「毎回楽しみに読んでいます」という、期待の声をお寄せいただきました。

しかしながら、本当に今回で最終回かもしれません。

何しろ、ネタは色々あるのですが、注意しないとどのように上手に書いても、元いた会社批判のように読まれてしまうからです。

もちろん、私にそんな意図はないのではありますが。

 

さて、今回は「裁判官からenergizerへ」という、実は私が一番強く「もう一度やるなら」という前提で感じていることを書きます。

「裁判からenergizerへ」

昔よりもだいぶ柔和になりました。

自分では、年齢を重ねたからということだけではないと思っています。

某社人事部長の頃は、けっこうな度合いで、社内で恐がられていたと思います。

半分は、見た目もありますが、残りの半分は仕事内容と、それからイメージされる人物像が根拠でしょうね。

よく、見た目において「圧迫感がある」と言われました。

「目が笑っていない」とも言われました。

これは184センチメートルの身長と目つきから来るもののようです。

あるいは、「話していると見透かされているようだ」とも言われました。

「品定めされているように感じる」などとも。

これは、人事部長という肩書き、仕事内容から連想されるものなのでしょう。

 

私は、人事部の前は総務部に所属していたんですね。

隣の部署から見る人事部のイメージはあまりいいものではありませんでした。

これはやっていた人の、性格や人柄には関係なく、仕事の性質としてということなのですが。

当時、人事部の仕事を隣から見ていて浮かんでいた言葉は「裁判官」というものでした。

採用にしても、研修にしても、人事制度にしても、ことごとく「人を裁く」仕事というイメージでいたわけです。

 

逆に総務部は、全体的に何かと「支援する」部署であり、社内イベントやクラブ活動などの施策を通じて、「元気づける」部署だったと思います。

私は、社内を支援する仕事、元気づける仕事には誇りを持っており、使命感を持って取り組んでいました。

隣の、人を裁く部署(というのは本来一部で、そうでない仕事も当然ある)には絶対行きたくないと思っていたものでした。

 

そう思っていたところに、ある日突然「人事部への異動を命ずる」の辞令が出たのです。

青天の霹靂でありました。

異動はずっと希望していたのですが、よりによって絶対行きたくないと思っていた人事部へ異動とは。

愕然としたことを今でも覚えています。

 

人間の慣れというものは恐ろしいものです。

最初こそ抵抗感を持っていたはずが、それから10年近くも続けることになるとは夢にも思いませんでした。

 

当時の私が考えていたことは、総務部時代にやっていた「支援する」、あるいは「元気づける」というコンセプトで人事部の仕事を行うということでした。

当時、そういう言葉は知らずにいたのですが、今で言えば「energizer(エナジャイザー)」ですね。

energizer(エナジャイザー)とは、「人に勇気と活力を与えられる人」という意味です。

勇気とは、自信がなくても新しいことに挑戦する心のことであり、活力とは、チーム内に、決めたことにすぐ着手しやり切るエネルギーがあること、と定義しています。

 

しかしながら、色々ともがきながらも、結局のところ異動前になりたくないと思って見ていた「裁判官」に、知らず知らずのうちに自分もなってしまっていたと思います。

当時、ひそかに自分があたためていた仕事の変革は、ほとんど実現することができませんでした。

・新卒採用の際のジャッジメントを「裁く」目ではなく、「才能を見出す」目で行うこと

・社員教育の現場も、社員を「裁く(できる奴、できない奴で見る)」目ではなく、社員の「可能性を広げる」目で行うこと

・人事制度の評価や昇進昇格などは、正に「裁く」行為に見えていたのであるが、社員を「評価しない」という夢の状態を実現すること

キャッチフレーズ的に言えば、「裁判官ではなくenergizer(エナジャイザー)に」ですかね。

 

もう一度、当時の人事部長のポジションに戻れるなら、上の3つのことはぜひとも再チャレンジしたいと思います。

 

他にenergizer人事部長の要件として、次のようなことも考えていました。

1.ビジョンの一番の語り部になること

極端に言えば、社長の次に会社のビジョンを理解し、社員に熱く語る語り部となっている必要があるのではないかと思っていました。

経営企画などと連携して、ビジョン構築に関わる努力をしていましたが、いかんせん現場経験が乏しい点で、語り部になることはできないでいました。

 

2.社内のハッピーストーリーの伝道師になること

会社内で起こっている、大小の成功ストーリー、感謝したいストーリーを集めた新聞発行を企画していました。

それは本来総務部や広報室の仕事でしたが、総務部でやり残したこととして、後ろ髪を引かれて考え続けていました。

 

3.人間として面白い人になること

もちろん人を笑わせるということではなく、人間的に魅力があるということです。

社内で最も教養溢れる人で、話も面白く、社員から「ああいう人になりたい」と思われる人が人事部長であるべきだと思っていました。

これらも、当時の実現度は決して高くなく、今一度できるなら注力してみたいポイントです。

 

「裁判官人事部長から、energizer人事部長へ」

実は、もう一度挑戦できるなら、一番実現したいテーマです。

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今野 誠一Seiichi Imano
企業経営にあたりつつ、自らも第一線のコンサルタントとして、組織変革コンサルティング、経営幹部教育プログラムや管理職研修のファシリテーション、企業理念構築や経営ビジョン構築ワークショップのファシリテーションなどを担当している。