人事部門に必要なセンスとは5(決して諦めない気持ち)

2015年6月2日火曜日


前職人事部長時代に、もし今戻れるならどうするだろう?という自分への問い掛けを通して、人事部門に必要なセンスについて考えるシリーズも、いつの間にか5回目となりました。

私の20年以上前の勝手な後悔物語といいますか、愚痴話しであるにも関わらず、興味を持って読んでくださっている方が多いようで、反響をいただきました。

4回で終了しようかとも思っていたのですが、せっかくですので思いつくまま続けてみようと思います。

今回は「決して諦めない気持ち」がテーマです。

企業としての人事施策の最終決定者は、取締役会およびTOPですので、人事施策の実行に当たってはその両者とのせめぎあいが私の課題でした。

人事部門の広い守備範囲の中でも、「人材採用」「教育研修」「人員配置」が当時の意思決定のせめぎあいの3大課題でした。

関係者が多いのであまり細かいことは書けないのですが、ギリギリの線で概略を書いてみようと思います。

1.人材採用→採用基準の相違

人材採用の難しさは言うまでもなく、採用の判定を下すことです。

この判定基準の相違が当時私の頭を悩ませていました。

私には親会社の時代から受け継いでいた人物像をベースに自分なりの考え方をミックスした採用基準というものがありました。

一方TOPには、当然ながらご自分なりの採用基準があるわけです。

この基準については、会社としての採用基準として何度かすり合わせを行っていたのですが、お互い頑固者につき、なかなか結論に至りません。ポジションからすれば、私が妥協すべきところでしょうが、自分なりに「会社の将来を思えば自分が正しい」と固く信じているわけです。

当時の私のよくなかったところは、諦めが早いところでした。

「これ以上言ってもしょうがない」

TOPに従えばまだサラリーマンとしてはいいのですが、そうではなく、これは絶対採るべきである、と自分が思いながら、TOPに嫌われそうな学生については、勝手に内定を出してしまい、後から報告してあえて怒られるなどという態度に出ていました。

こんなやり方は、当然ながら、無謀かつ邪道なんですよね。
組織人としてあってはならないことです。

幸いそのようにして採用した社員が後々活躍しているらしきことが救いなのですが。

当時に戻れれば、諦めて無謀な行動に出ることなく、業界自体の変革の必要性から説き起こす努力をして、今ではなく中長期に会社に必要な人材像について、TOPとの一対一ではなく、例えば人材委員会のような部門とボジションを越えた議論の場を設けるなどの方法を取るのではないかと思います。

当時は若かったですし、実に視野が狭かったと反省しきりです。
今、コンサルタントという立場になって、こうした場合に狭い議論をするのではなく、なるべく「大きく大きく」、「広く広く」、「多くの人を巻き込んで」というスタンスで臨めるようになりました。

2.教育研修→幻の社内ビジネススクール

私が人事部長をしていた会社が属する業界は、どちらかというと古い体質の残る新しい考え方がなかなか生まれていない業界でした。

ある時、次世代幹部を養成していくに当たって、視野の広い、色々な角度からものが考えられる変革人材を養成しようという狙いで、選抜型の社内ビジネススクールを構築することを発案しました。

社外講師を招聘したオリジナルプログラムです。

取締役会では時期尚早という意見や、必要性への懐疑的な意見もあり、侃々諤々の議論になりましたが、難産の末、何とか実現にこぎつけました。

マネジャー対象で手を挙げた者限定の企画でしたが、非常なる反響を呼び、好評のうちにカリキュラムはスタートしました。

何回目かの授業が進んだ後のある日の役員会の席上で事件は起こりました。
反対派の方々から「あんなことをしていて、業績が上がるのか?」という実に短視眼的かつ否定的意見が出されました。
「すぐに業績が上がるのか?」とつめられれば、賛成派だった役員さん方も力強い即答はできません。
雪崩を打ったように反対意見に負けて、何とTOPが「中止」の裁定を下してしまったのです。
人事部長の私はささやかな抵抗を試みましたが、多勢に無勢かつ一人事部長という立場ではどうにもなりません。

手を挙げて参加し、嬉々として学んでいた受講者達からは当然大きなブーイングです。

ここでも諦めのいい私の性格が災いします。
「これ以上言っても仕方がない」と、来るべきリベンジを心のなかで誓うも、その時はそれきりで終わってしまったのです。

当時に戻れるなら、私は「あの手この手」を考えることだろうと思うのです。
カリキュラムを一旦縮小して受講者の負担を減らす形で合意点を見いだす方法も取れたかもしれません。

それに加えて、受講者のスクールで学んでみての実感を集めて、再度説得を試みる方法もあったと思います。

感覚的でなく、業界の将来と自社の将来を考えた時の、次世代幹部に必要な教育という考え方の説得力を上げる努力も足りなかったのだと思います。

3大課題の3つ目の「人員配置」については、内容的に差し障りがあるため割愛しますが、人事部門には、社内の反対勢力にあってもくじけない、諦めない心と姿勢が必要です。

それも単なる頑固者になるのではまずいのですが、あくまでも中長期の視点を持った上での「会社にとって何が必要か」という熟慮と信念がベースにあることは当然です。

そして、さらに必要なのは「説得力」を持ち得るかですね。

論理展開も当然重要なのですが、当時の私に欠けていたのは、「現場を巻き込む」「現場を味方につける」というセンスですね。

「戦う人事部長」などと自称して青臭い、実に局地的な戦いをしていたと大いに反省しています。

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今野 誠一Seiichi Imano
企業経営にあたりつつ、自らも第一線のコンサルタントとして、組織変革コンサルティング、経営幹部教育プログラムや管理職研修のファシリテーション、企業理念構築や経営ビジョン構築ワークショップのファシリテーションなどを担当している。