人事部門に必要なセンスとは2(AND 思考で解決する)

2015年5月12日火曜日


前回のブログから「人事部門に必要なセンスとは」というタイトルで、私が某社の人事部長だった時の振り返りを書いています。

前回は「 1 .組織戦略という発想を持つ」でした。

今回は、「AND 思考で解決する」ということについてです。

2. AND 思考で解決する

人事部の仕事というのは、経営者と現場社員、の間にいるという意味で、非常に悩ましいものだと思います。

私も現役時代、その距離感に難しさを感じていました。

人事部に移る前は、隣の部署である総務部で働いていました。

とにかく「社員に喜んでもらおう」「最高の環境を作ろう」という、寄り添った奉仕の心の仕事が楽しくて、天職だと思ってやっていました。

そこから見える人事部の景色は、あまりいいイメージには見えていませんでした。

採用~教育~評価~配置、といった一連の行為が、「権威で人を裁く」ということをベースにした、実に嫌な仕事に感じていました。

会社の中で、最もやりたくない仕事が実は人事の仕事だったのです。

今となっては、当時の私の見方はもちろんやってもみないで考えている一面的なものであったわけで、後からやってみて色々考えも変わることになりました。

そんな自分がまさか人事部長というポジションに着くことになるとは夢にも思っていませんでした。

経営者と現場社員との間の立ち位置としては、意識の上で、圧倒的に社員寄りでした。

総務時代の「どうしたら社員に喜んでもらえるか?」というスタンスが染み付いていたことと「権威で人を裁く」ことへのマイナスイメージを持っていたことの反動だと思います。

例えば、人事異動を考えるような場合。

事業戦略上の観点よりも、異動になる社員にとって意味があるか、成長につながるか、社員に不利益はないか、ということへの思いが自分の頭の中にいっぱいになります。

社員の立場で考えるのは、もちろんいいことなのですが、それが過ぎて、肝心の「事業戦略の必要性」という観点が疎かになっては本末転倒です。

社長はもちろん社員の立場を無視するわけではないのですが、経営視点・事業視点を強く持って話しをしますし、私はどちらかというと、社員代表的な感覚で話しをするわけです。

そのため当時の社長と私は、意見の相違からぶつかることが少なくありませんでした。

人事部長として役員会に陪席する立場だったのですが、その席上も含めてです。

当時あるビジネス小説の先生と食事する機会があり、仕事への姿勢の話題になった際に「今野さんは差し詰め “ 闘う人事部長” というところですな」などと言われて、勘違いしてその気になったりしていたものです。

勘違いという言葉を使いましたが、自分自身は意気に感じてやっていたものの、社員の意識に大きく偏った人事部長であったと反省しています。

当時の自分の意識に欠けていたのは、人事の仕事が「現場と経営をつなぐ」仕事なのだということです。

経営者が、社員の意識も含めた現場の情報を詳細に把握することは事実上できません。

そのことにエネルギーを使い過ぎても、経営者として問題が出てきます。

一方、現場の部署と所属している社員たちは、経営者が考えていることを正確に理解していない可能性も高いものです。

経営者との接点が決定的に少ないことに加え、現場には自分の部署の利害を優先して考えるバイアスというものも存在します。

この経営者と現場の間に位置して、それぞれの理解を深めるための具体的な動きをすることも人事部門の重要な役割だと考えます。

そして、その時に必要になる思考回路が「 AND 思考」なのです。

「 AND 思考」とは、二律背反する二つのことを、同時に解決する方法を考えること。

課題の数は二つとは限らず、あちらを立てればこちらが立たずというトレードオフの関係にある3つや4つ(いくつでも)の課題を、同時に一発解決できる方策を考えることを言います。

上述の人事異動の例で言えば、事業戦略上人員シフトが必要というのは経営視点です。

逆に、個の状況を考えて、一人ひとりの社員の異動の意味を考えるのは、社員軸の視点です。

この二つの視点を同時に満たす最適解を見つけるのが人事部の仕事であるはずです。

社員軸に大きく偏っていた当時の自分の視点では、この「 AND 思考」の意識が弱かったと言わざるを得ません。

他にも「生産性向上と経費削減と社員の成長戦略」や「会社の規模拡大をしながら社員をよく見た経営を実現する」等、AND思考が必要なことがたくさんあります。

今からやり直すことができるとしたら「経営者の考えを知る」ことと「現場の実情と考えを知る」ということに同じ重みで力を入れて、 AND 思考の意識を強く持つことをしたいと思います。

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今野 誠一Seiichi Imano
企業経営にあたりつつ、自らも第一線のコンサルタントとして、組織変革コンサルティング、経営幹部教育プログラムや管理職研修のファシリテーション、企業理念構築や経営ビジョン構築ワークショップのファシリテーションなどを担当している。