人事部門に必要なセンスとは1(組織戦略という発想を持つ)

2015年4月28日火曜日


組織変革のコンサルティング(この頃は“組織戦略のコンサルティング”という言い方をすることもあります)を始めて18年目に入りました。

独立起業する直前まで9年半人事部の仕事(大半は人事部長として)をしていました。

17年間、コンサルタントという立場で多くの企業の人事部門の支援をしてきて、時々思うことがあるんですね。

それは、「今、あの頃のポジションに戻ったら、相当いい仕事ができるんだけどなあ・・・」ということ。

コンサルタントとしての経験を積み重ねてきて分かったこともありますし、分かってはいたのに、視野の狭さや、行動力の無さから徹底してできなかったということも多いんですね。

後から振り返って、ああすればよかったと思うことの何と多いことか。

1.組織戦略という発想を持つ

当時の自分を振り返って最も強く思っていることは、自分の肩書きを間違えていたな、ということです。

ごく当たり前に「人事部長」という肩書きの名刺を持って人事部の責任者の仕事をしていました。

人事部の仕事は伝統的に、社員を選別採用し、配置し、教育し、評価し、処遇するという一連の人材フローを回すことにおかれていました。

これは俗に「人材フローマネジメント」と呼ばれている、ごく当たり前の考え方であったと思います。

これを人事部の仕事と思い込んで回していると、大きな問題が生じてきてしまいます。

まず、人材フローはそれぞれがひとつの仕事として成り立ってしまうので、一般論的な「かくあるべし」が感覚的に存在しているということ。

歴代の人事部長や、担当者から受け継がれてきた、「採用はかくあるべし」「教育はかくあるべし」という、ある種伝統に近い考え方ややり方が存在していたと思います。

本来は、人事部の仕事を独立したものとして受け継いでいくのではなく、目的として考えるべきは、企業としての本業である「事業」を戦略に基づいて上手に回し、結果(業績)を出していくための、人材や組織の有り方を考え実現し、結果に責任を持って行くことが正しい姿なのではないかと、離れてみて冷静に考えられるようになりました。

「人材フロー」を業務の考え方の中軸においてしまうと、社員を「人材」や「人財」という呼び方をして(そのこと自体はよいのですが)、「個」を対象として仕事をしがちになります。

しかしながら、社員が一人で仕事をして、業績を上げていくということはほとんどなく、何人かのチームが基本となり、そのチームがいくつか集まって上位のチームになり、組織として役割を分担して結果を出していくことが現実です。

そう考えますと、本来は業績につながる組織のあり方、言い方を変えますと事業戦略を実現していくためにふさわしい組織のあり方を戦略的に考えた上で、そのあり方に基づいて人材を考えるべきなのですが現実は違っていました。

社長と経営会議(役員会)が事業の計画をし、それに基づいて組織のあり方や、人員計画などについてもほとんど議論してしまいます。

そこで決められた方向性に基づいて採用や教育、処遇の仕組みを考えるのが人事部の仕事だったのです。

このような仕事を続けていくと、人事部という組織は次第にオペレーション部門(方針を実現すること、あるいは決められたことを回していく)という位置づけになっていきます。

上に「社長と経営会議(役員会)が事業の計画をし、戦略を話し合い、それに基づいて組織のあり方や、人員計画などについて議論する」と書きましたが、この部分が非常に重要なのです。

事業の計画と戦略を「事業戦略」と呼ぶならば、それに基づいて組織のあり方や、人員計画などについて議論する部分を私は「組織戦略」と呼びたいと思います。

当時の役員さんのほとんどが事業責任者であって、組織の人事の専門性が高いわけではありませんでした。

しかしながら、組織や人事のことというのは、組織にある程度の長さいたことがあれば誰でもある程度のことは語れてしまう「役員総人事部長」になりがちな分野というやっかいな側面があります。

確固たるフレームもない中で、組織図を描き、人員数をイメージし、頭数で人事異動の方針なども決まっていってしまいます。

組織を戦略的に考えていくためには、「リーダーシップのあり方」「組織構造のあり方」「組織風土のあり方」「必要な人材像」といった、一定のフレームで継続的に考えていくことが必要です。

当時は「組織戦略」という言葉も無ければ、それを考えるためのフレームもありませんでしたが、事業戦略を十分に理解した上で、それを着実に実行していくにふさわしい、人や組織のあり方を「組織戦略」として立案する必要性を感じました。

そして、その組織戦略を経営陣が合意して、事業戦略と同じ重要性の認識を持って、その因果関係を意識しながら軌道修正していくことが必要だと感じました。

色々な形で、組織戦略という考え方に挑戦しましたが、いかんせん経験不足でなかなかうまくいきませんでした。

もっとも、当時組織戦略という言葉はありませんでしたので、まだ「社長のつもりで人事をする」というような言い方になっていました。

ここでようやく今戻れるとしたら、当時の自分の肩書きをどう変えるかという話にたどり着くのですが、さしづめ「組織戦略部長」といったところでしょうか。

あるいは「経営企画室」に準じるとするならば「組織計画室長」という肩書きも目指す姿としてふさわしかったかもしれません。

色々な事情で某社人事部長の職を辞して、組織変革コンサルティングの会社を起業し、多くの経験を背景にして、ようやく組織戦略の何たるかを深めていけるようになっていきました。

(つづく:次回のブログでも引き続き「人事部門に必要なセンス」について考えます)

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今野 誠一Seiichi Imano
企業経営にあたりつつ、自らも第一線のコンサルタントとして、組織変革コンサルティング、経営幹部教育プログラムや管理職研修のファシリテーション、企業理念構築や経営ビジョン構築ワークショップのファシリテーションなどを担当している。