効率化→省力化→目的の喪失

2016年8月30日火曜日


人気漫画を実写化した映画『バクマン。』。

過去作品のオマージュとも言える細かい工夫や、執筆風景をバトルに模して表現したアクションシーンなど、原作とは違った魅力で楽しませてくれる映画です。

バクマン。

 

『少年ジャンプ』の読者アンケートで、1位を取ることを目標とする漫画家たち。

「執筆風景をバトルに模して表現」と言いましたが、同じ『少年ジャンプ』に掲載している作家同士が、ライバル関係であり、同志となっています。

その関係は、漫画家を支える編集者にも当てはまります。

 

編集者たちの競争意識を煽るため、編集部ではそのアンケート結果が、毎週ランキング形式で貼り出されます。

下位から徐々に貼り出されるランキングに群がる編集者。

その結果に一喜一憂し、編集部全体が熱気に包まれます。

ランキング表

 

こういった施策は、色々な職場で見られそうですよね。

この映画でも、なんてことはない普通の職場風景なのですが。。。

実はこれ“嘘”のシーンなのです。

 

“嘘”とは言葉がよくないですね。

“演出されたシーン”なのです。

 

編集部の様子を細かく表現した映画ではあるのですが、このシーンだけは誇張されています。

実際には、少年ジャンプ編集部では、各編集担当者のパソコンに順位を送信しているので、そんなランキング表は存在しないそうです。

 

しかし、パソコン画面を映すだけでは、映画的に盛り上がりに欠けてしまう。

編集者が個別に見ていても、競争感が出ない。

と考えた結果、あえて「ランキングを貼り出す」というアナログな方法をとったとのことです。

 

ランキング表は一つの事例です。

様々な面白施策は多くの職場で見られたことだと思います。

社員の顔写真を貼りだす、感謝を伝えるボードを掲げる、定期的に席替えをする、カフェスペースを設けるなど。

 

仕事に対してゲーム性・エンターテイメント性を持たせることで、社内活性化につなげる。

全員で同じものを見る場を作ることで、社員同士が集まり、会話を生み出す。

競争意欲を持たせることで、より高い成果を出そうと言う意欲を喚起する。

などの、目的を持って。

 

 

そして、次第に辞めていった職場が多いのだと思います。

いや、「いつの間にか消えていった」と言うべきか。

 

「メールで見れればいいじゃん」

「職場に顔を出す時間なんてないよ」

「結果がわかればいいんでしょ」

といった声から。

 

そして、「効率化しろ!」という会社側の掛け声から。

 

でも、これって本末転倒ではないですか?

 

「活性化したい」「人が集まる場をつくり」「意欲を高めたい」。

社内に必要だと感じて、始めた施策であるはずです。

 

そういう施策には、ちょっとした手間はつき物です。

むしろ、「ちょっとした手間」とは、「ちょっとした工夫」なのです。

 

にもかかわらず、効率化の名のもとに様々な施策が消えていっています。

また、担当者が変わるたびに、本来の目的からかけ離れたものになってしまっています。

 

もちろん、実施して効果のないものは辞める、やり方を変えるとうことは必要です。

また、効率化を進めることは、競争環境の中で不可欠なものです。

 

しかし、効率化の掛け声のもとに、無思考にあらゆる施策を消してしまってはいないでしょうか。

本来の目的とともに。

 

無駄なことを続けている状態は「思考停止」と言えますが、「効率化」を掲げ、本来の目的を考えずに辞めてしまうことも「思考停止」な状態です。

 

本来の目的を見失い効率化を進めた結果、効率化が目的となり、しだいに効率化が省力化と勘違いされるようになります。

そして、無駄なことをしない職場は、チャレンジしない風土と、自分のことしか考えない個人を生み出します。

 

効率化を進めた結果、「前の職場の雰囲気の方がよかった」とギスギスした職場になってはいないでしょうか?

 

 

ここ数年、社内運動会を復活させたという会社が増えているようです。

中小企業だけでなく、大手企業にも。

 

「運動会なんて、コストがかかるだけで無駄だよ」と言って辞めてしまっていたけれど、実は意味のあるイベントだった。

無くなって気づくことは、他にもありそうです。


林 直人Naoto Hayashi
組織変革コンサルタントとして、教育研修プログラム設計や講師、企業理念構築・運用などに従事。