「気になる」って大事な感覚だよね。

2016年8月24日水曜日


研修中にホワイトボードに何らかのメッセージを書き残すことがあります。

書いたことを受講生に周知するでもなく、おもむろに。

受講生も何のメッセージかわかりません。

 

例えばこんな感じのものを。

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(TTPとは、(徹底的にパクる)の意味です)

 

実はこれ、後々のワークのヒントだったり、研修全体でのメッセージだったりするのですが、しばらくは、ただ書いておくだけで、何のメッセージかは伝えません。

 

メッセージというのは、伝えるのにベストなタイミングというものがあります。

だから、書き出して数時間後の“ベストなタイミング”でその意味を伝えます。

 

そして、意味も伝えないのに書いておく理由は、目に入れることで、脳に染み込ませることにあります。

“何となく気になる”という時間を置くことで、記憶への定着率が高まります。

料理で言うと、寝かせておくフェーズです。

 

目に入るだけでも意味がありますし、グループ5,6人いれば話題になることがあります。

「あれってヒントなんじゃない?」と。

 

さらに、企業によっては、講師に聞いてくる人もいます。

「これって、何を意味しているんですか?」

「これは、あの映画の台詞ですよね?」

と言った具合に。

 

 

と、ここまでは研修ファイシリテートのテクニックの一つなのですが、面白いのが、企業によって反応が違うことです。

そして、その反応が事業の状況や職場の様子を表しています。

 

新しいサービス提案が多い企業、コミュニケーションが活発な職場で働く方には、休み時間などに講師に聞いてくる社員が多いものです。

一方で、そうでない企業、職場の社員の方は、講師から伝えられるまで、反応はありません。

 

反応がないというのは言い過ぎでした。

目にはしているんです。

何だろう?という表情もしているんです。

でも、それ以上の動きは見られません。

もちろん、その場で反応してきて欲しくて書いているわけではないのですが、それぞれの会社の文化を感じます。

 

前者の企業は、アンテナを張ること、好奇心を持つことが求められているんですね。

もちろん、好奇心のある人が集まっていると言うこともあるでしょうが、文化がより重要です。

気になることを質問することや、面白いと思ったことを共有することが嫌われない文化なのでしょう。

それが、仕事に関わらないことであっても。

だから、情報を自分から取りに行くことが当たり前になっています。

 

後者の企業は、極論すると「ダメ出し」と「受身」の文化であることが多いです。

 

何を言っても、ダメ出しをされる。

質問や確認でさえも、嫌な顔をされる。

ちょっとした会話が、無駄口と言われる。

結果として、「沈黙は金なり」と思うようになる。

 

また、必要な情報は取りに行かなくても、入ってくる環境にいる(と思っている)。

疑問が会っても、「自分が聞かなくても、誰かが聞くだろう」と思っている。

興味を持った姿勢を見せると、余計な仕事が増えてしまう気がする。

 

そういった企業・職場の文化が、研修でのちょっとした所作から見えてきます。

 

 

「受け身」な文化というのは、日本全国で進んできているものかもしれません。

その背景に、まずは学校教育。

そして、インターネットの影響。

 

SNSが主な情報の収集源という人が少なくありません。

もちろん大事な情報源なのですが、それこそが受身になっていると考えられます。

実は私も、SNSやキュレーションサイトを利用することが少なくないのですが、情報を得ているようで、「情報に流されているだけなのかも」と感じることがあります。

そして、そういう情報は入ってきても、自分の中で流れていってしまいます。

気になるから情報を得ているのではなく、入ってくるから情報を得ている状態です。

 

こういう状態に麻痺してしまうと、「必要な情報は勝手に入ってくる」と思うようになってしまいます。

 

そう、これ、あの状態と同じです。

目の前の気になったことも、いずれわかるだろうと、受身になっている状態と。

 

情報への受動性は、「気になる」という感覚の衰えによって生まれるものだと思います。

子どもの頃には持っていた感覚ですが、何もしなくても衰えていきます。

環境によっては、その衰えは加速します。

 

インターネット上の情報に日々触れていると、アンテナを高く保てているような感覚になることがあります。

無意識のうちに。

 

しかし、それち浸ってしまうと、人が話題にしたこと・興味を持ったこと、ニュース・事件になったことにしか反応できなくなります。

これが、自分自身の「気になる」感覚の衰えです。

 

情報感度が足りないと自覚した人が、情報収集ルートを増やそうとしますが、それよりも身近に起こっている変化や違いに気づけるようになることが第一の処方です。

 

会社としても、イノベーションや新しい提案を求めるのならば。

研修や課題図書より、「最近、面白いことあった?」と、いった投げかけを合言葉にすることの方がよっぽど大事です。

 

まずは、「気になる」という感覚を研ぎ澄ますことが。


林 直人Naoto Hayashi
組織変革コンサルタントとして、教育研修プログラム設計や講師、企業理念構築・運用などに従事。