組織変革、まずは視点を一つ下げる

2016年8月3日水曜日


組織変革のお手伝いをしていると、社員に対して「一つ上の視点を持ってほしい」「経営視点を持ってほしい」という想いを聞くことが多くあります。

 

階層に関わらず、自分の担当範囲とは一つ上の視点で考えることは、重要なことです。

成果を出す上で、リスクヘッジの上で、周囲との連携を取る上で、自己の成長の上で。

 

特に組織変革は、組織の脱皮ですから、社員にも自分の視野や役割認識から脱皮してほしいと思うことは当然のことであり、組織変革プロジェクト上も欠かせないプロセスです。

 

しかし、何でもかんでも、「視点を上げろー!」という号令だけでは、混乱を招くだけでしょう。

組織の現状や、変革のフェーズを鑑みる必要があります。

 

最近思うことは、むしろ、まずは視点を下げることの方が大事なのだということです。

 

組織変革コンサルティングのご依頼をいただく場合、どちらかと言うと、躓いている側の企業が多いものです。

「躓いている」というのは言い方が悪いですね。

「このままでは自社は危うい」という危機感がある企業です。

 

そういった企業の多くは、管理職が自分の役割を果たしていないという現状があります。

業績上は好調の会社であっても、その内情は同様であることが多いでしょう。

 

その時に経営者の思った通りに「皆さん目線を上げてください」「経営者のつもりで考えてください」と旗振っても、なかなか行動変化に至りません。

喩えるなら、バタ足ができないときに、クロールを期待するようなものです。

 

変革のフェーズを鑑みる必要があると先述しましたが、時として組織の足腰を固めるフェーズと位置づけ、上ではなく下を見させることが重要になります。

 

「視点を下げる」「下を見る」というのは、難易度を下げるというものではありません。

もちろん、降格させることでもありません。

 

自己の現状の役割を担うとともに、部下が担う実務やマネジメントを部下と一緒になって取り組むということです。

役員は部門運営を部長とともに、部長はチームマネジメントを課長とともに。課長は課の運営とともにプレイヤーとして、実務を担う形で。

上の役割とのオーバーラップではなく、下の役割とのオーバーラップです。

 

バタ足ができないのであれば、まずは潜水、蹴伸びからしっかりやるべきなのです。

 

それによって、上司部下が連携して組織運営や実務を担うことで安定さを増します。

また、上司が率先垂範することになるため、模範となる機会が生まれます。

さらに、一つ下の役割を担うことで、自分の実力の足腰固めともなるのです。

 

 

「部下が担う実務やマネジメントを部下と一緒になって取り組む」。

冷静に考えるとこれはマネジメント上、当たり前のことです。

にも関わらず、なぜ、このようなことをあえて言及するのか。

 

それは、組織変革を進める組織というのは、急速な変化を求めるがあまり、視点を上げることばかりを求めがちになるためです。

「当事者意識を持てー」と言って、会社課題を一般社員層や課長層に押し付けるように捉えられてしまうこともあります。

もちろん、当事者意識は大事であり、視点を高く持つことも大事なのですが、それだけでは足元を見なくなってしまうんですね。

 

同時に、中間管理職は「上の方針が悪いから」と上の責任にもしがちです。

そうなると、「上の視点で考えろ」「経営視点を持て」といっても嫌悪感を抱くだけです。

 

また、変化しようとするときというのは、組織の粗が見えやすくなるもの。

そういう時は、人は自分以外のせいにしたくなり、「部下が育っていないから」と下の問題を自分と切り離してしまいがちなためです。

これは、トップマネジメント層の傾向として多くあります。

 

 

繰り返しになりますが、「視点を下げる」「役割を下げる」というのはマネジメントのあり方として基本に立ち返ることです。

変革を急がなくてはならないときこそ、組織の現状、変革のフェーズをしっかり考え、適切なメッセージを送ることが大切です。

 

 

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組織変革には、組織の足腰・体幹を鍛える時期が重要。


林 直人Naoto Hayashi
組織変革コンサルタントとして、教育研修プログラム設計や講師、企業理念構築・運用などに従事。