変革方針が伝わらない理由

2016年5月18日水曜日


企業が研修を実施する目的、職場が研修に送り出す想いは、学び・気づきを得てほしいこと。

それによって、考え方や行動が変化し、今まで以上の成果を生み出してほしいというものです。

 

ただ、この「研修」というものについては、賛否両論状態です。

「研修で人は変われるんですね」と感じる人もいれば、「研修なんか意味がない」と言う人もいます。

 

とは言え、後者の考えの人も、「研修」という場を完全に否定しているわけではありません。

「研修から得られる学び・気づきがある。それはわかるが、なんとも職場での実践、行動の変化に繋がってこない。」

という感覚を持っています。

 

「実践、行動の変化につながらない」。

実は私も研修講師を行っていて、ふと感じてしまうことがあるんです。

「いい事に気づいている、でも、、、ものすごく表面的。」ということを。

「で、どう変わるの?」ということが見えてこないんです。

 

例えば、研修の最後に「アクションプラン」「心構え5か条」なんかを書いてもらうと、”いいこと”が書いてある。

“いいこと”なのですが、当たり前のことが書かれていて、職場に戻ったら風化されてしまうんだろうなとも思ってしまいます。

例えば、新入社員研修では「目的意識を持って、話を聞く」「納期の前の締め切りを自分で決める」など。

 

アクションプランをできるだけ具体化するということも大事なのですが、、、

なんか手段ばかり考えるようになってしまうんですよね。

その決めたことしかやらないなど、視野が小さくなってしまう。

 

そんなことを考える私が、研修で「どう変わるか?」「何を変えるか?」を意識させるために、こんなワークシートを使うことがあります。

 

社会人としての心構え

 

これからの行動や意識を書かせると同時に「これまでは?」を横並びに書かせること。

非常に単純なことですが、これだけで、「どう変わるか?」を意識するようになります。

この「どう変わるか?」が重要なんです。

 

話を聞く姿勢についても、時間管理についても、これまでだってうまくやろうとは思っています。

それを改めて意識するぞ! だけでは、どんどんその意識は薄れることを待つだけになってしまいます。

 

研修を受講して、「良い気づきがあったね」だけで終わらせない。

「どう変わるのか?」「何かから何に変えるのか?」ということを、本人に意識させることが大事です。

 

これ、、、言葉にすると当たり前のことですが、意外に見落としがちなことです。

 

そしてですね、組織運営においても、とっても大事な視点なんです。

 

練りに練った中期経営計画や全社方針。

「改革元年」と位置づけて、社員に伝えるものの、現場を見ると、社員の行動には思いのほか変化がない。

結果として、事業活動も去年となんら変化なし。

 

そんなことはないでしょうか?

 

これこそまさに、「何を変えるのか?」「どう変えるのか?」といったことが社員には伝わっていない状態なのです。

 

社長の頭の中では、これまでとは異なる事業フェーズにならないといけない。

そのためには、事業活動の付加価値を高め、社員の能力も次元を変えていかなければならない。

と考え、その思いを伝えているつもりですが、社員にはそこまで伝わっていないという悲しい実情。

「社長は『一新』したことを言っているのかもしれないが、現場からすると『例年通り』に聞こえる。」という社員の声が多いことが事実です。

 

その背景として、

・そもそも、社長の頭の中の考え、心の中の想いを十分に言葉にできていない

・社長→役員→部長→課長→メンバーと伝えられるうちに、本質からずれてしまう。

・毎年「変革元年」的なことを言っていて、『例年通り』に聞こえる。

などがあります。

 

最後のものなどは、まさに現場と経営との齟齬ですよね。

でも、この現場と経営の齟齬こそが、見過ごされがちのことなのです。

「毎年変わらないといけない」という社長の想いは十分わかるはずなのに、現場からすると「変化」ということを言われ続けて、いつの間にか麻痺状態になってしまっているということが。

 

ユニクロの柳井氏などはそのあたりを汲み取って、経営方針を出しているようです。

常に新しい商品・素材を世の中に出している同社ですが、変化と感じられる方針が出されるのは、数年に一度とのことです。

もっとも、その数年に一度の方針というのが、「非常識」と感じるほどの高い数値目標になるそうなので、社員としては大変とのことですが。

 

歯がゆいことですが、客観的に考えるとよくわかります。

プロ野球界などでも、「一新」「超変革」といったスローガンが出されています。

かっこいい言葉ですが、聞き古された言葉でもあり、逆に新鮮味がないと思いませんか?

「あ、なんか他所でもありそうだな、で、何が変わるの?」と思ってしまいませんか?

まぁ、ジャイアンツは奇しくも「一新」しないといけない事件がありましたが。

 

超変革 (00000002)

 

対外的な企業コンセプトも、「○○○ではない。○○○なのだ。」みたいなのはわかりやすいですよね。

ウォルマートの「売れる、売れないではない。顧客に価値を提供できたか、どうかだ」

スターバックスの「我々は人々の腹を満たしているのではない。人々の精神を満たしているのだ」

ナイキの「シューズを売るのではなく、高性能を売るのだ」

などなど。

 

 

言うまでもないことですが、意思疎通を図ることは簡単ではないこと。

それが1対多数であればなおさらのことです。

一人ひとり、言葉の捉え方や理解力は異なるものですから。

 

多くの企業で、変革が声高に言われていますが、「何を、何に変えるか?」。

この基本を抑えることは、変革方針を伝えるうえで、見落とせない観点だと思います。


林 直人Naoto Hayashi
組織変革コンサルタントとして、教育研修プログラム設計や講師、企業理念構築・運用などに従事。