経営層は“小料理屋”を目指せ!

2016年5月11日水曜日


相棒展

 

小料理屋さんって、いいですよねぇ。

女将さんが一人で切り盛りしていて、カウンターのある。

 

TVドラマ『相棒』に出てくる「花の里」なんかは、まさにそのイメージにぴったり。

(写真は2012年の『相棒展』のものです。)

最近だと『重版出来』の「重版」なんかが、それでしょうか。

 

何がいいかって言うと、手際よく料理をしているところが見れるのがいい。

なんかそういうのを見ていると、心理的に距離が近くになったように感じます。

もちろん、アットホーム的な雰囲気も魅力ですが、この“料理をしているところが見れる”というのが、そのアットホーム間をより際立たせてくれているのだと思います。

 

そして何より、出てきた料理がより一層美味しく感じます。

料理番組なんかも同じで、できる過程がわかるから、食欲をそそり、より美味しく感じるのだと思います。

「はい、できました」と完成したものを持ってきてもらうのとは違う期待感があります。

 

 

「経営層は“小料理屋”を目指せ!」とよくわからないことを銘打ったのですが、この「料理をしているところが見れる」ことが重要なのではないかと感じます。

例えば、中期経営計画など。

 

上場企業ならずとも、今では当たり前のように作られている中期経営計画ですが、多くの経営者を悩ませているのが、計画や施策が思ったように進まないということ。

いつのまにか尻切れトンボで終わってしまうことの繰り返し。

それ以前に、着手もされないということもあるでしょう。

 

経営層で議論を重ね、額に汗をかき、緻密に立てた計画であるはずなのに、それ通りに動かない。

悩むと言うより、経営者からしたら「不思議に感じる」と言った方が適切かもしれません。

 

しかし一方で、現場の社員に目を向けると、「会社が何をしたいのかがわからない」という声を聞くことが珍しくありません。

いや、ほとんどがそういう状態です。

 

経営層、、、と言うか社長が、思っているほど自分の考え、会社の方針・戦略というものが現場に伝わっていない。

これが現状です。

 

こういう現状を耳にしても、、

「そんなことはない! 全社会議でしっかり伝えた。

各役員、部長を通じて、社員に共有するようにも伝えている!

全員に行き渡っているはずだ。」

と思ってしまう社長も少なくないものです。

 

でも、冷静に考えて見ると

・一回聞いただけでは理解しきれない。

・理解したとしても、いつの間にか薄れてしまう。

・役員→部長→課長→課員という伝言ゲームの中で、手段ばかりが伝わっていく。

といったことは、想定できることですし、さらに言うと

・社長からすると「一新」したことを言っているのかもしれないが、現場からすると「例年通り」に聞こえる。

 

「もっと自分の会社に当事者意識を持ってくれれば…」という思いにもなるかもしれませんが、これが会社の実態です。

もっと言うと、それが人間なんだと思ってください。

 

だから、経営計画は繰り返し伝える必要がある!

というのでは、あまりにも芸がなさ過ぎます。

 

そんなこんなで、最近思うことは、「これが中期経営計画です!皆さん頑張ってください!」と言って結論だけを伝えるのでは、響かないということです。

 

大事なのは、「経営層で議論を重ね、額に汗をかき」という部分も見せることなのではないかと。

つまり、中期経営計画をつくる過程、経営層での議論の内容を、公開することが、方針・戦略浸透の大きな肝になるということです。

 

できる過程を知ることで、料理への期待感、おいしさに変化が出る、さらには関係性にも変化が出るのと同じことです。

 

あ、小料理屋なんて言いましたけど、中華料理屋でチャーハンを頼んだときと同じなんですけどね。

でも、小料理屋には女将さんとの何気ない会話があって、それも魅力ですから。

 

少しわかりづらいたとえでしたが、端的に言うと、

「できる過程を知っているものの方が、意図を理解しやすい、当事者意識が高まる」。

これはもう、言うまでもないことでしょう。

 

 

どうやって、共有するか?

 

経営会議の様子を撮って、編集して共有すれば良い。

「専務と常務はこういう意見がある、でも社長はこういう意見を持っている。双方はこんな意見を大事にしていて…」という意見のぶつかり合いを見せてもいいと思うのです。

そこに関心を持つことが、経営に関心を持つことになるので。

 

そんな大胆には難しいと言うのであれば、経営会議に社内広報が入り、文字に起こして社内報で流しても良い。

経営層にインタビューをして、方針決定までの過程を深掘りしても良い。

私たちも経営層に個別面談を行いますが、それだけで、その会社への参画意識が高まりますから。

 

方法はいくらでもあります。

 

国会中継と同じで、大半は秘密裏に行われているので、全てを出さなくてもいい。

(国会答弁のように、揚げ足取り議論、「そーだ、そーだ」議論では意味がありませんが。)

 

大事なのは、その結論になるまでの紆余曲折を伝えることです。

「色々な視点を鑑みての結論なんだ」ということが社員に伝われば、納得感も高まりますし、それによって経営者が何を判断軸にしているかも伝わります。

これが経営視点醸成の一歩目でもあります。

 

経営方針、経営層の考えを理解して欲しい。

そう思うのであれば、理解しやすい方法に変えること、つまり経営層から降りることが需要でしょう。

表現的にではなく、心理的に。

“女将さんとの何気ない会話”のように。

 

 

イギリスの「クール・ブリタニカ」を仕掛けたマーク・レナードがこんな言葉を残しています。

「変革は伝達されない限り、変革にならない」

 

組織のスリム化や、プロフィット部門へのリソースシフトで、社内広報機能がなくなってしまった企業も多いと思います。

しかし、変革を進める上で、社内広報の位置づけはますます重要になっていくでしょう。


林 直人Naoto Hayashi
組織変革コンサルタントとして、教育研修プログラム設計や講師、企業理念構築・運用などに従事。