「出口」を考えて人を育てる

2015年4月27日月曜日


「君達を人材業界のプロにしようと思っていない。

ビジネスのプロフェッショナルなれるように育てていく。」

 

私が新人の頃、OJTを担当してくれていた上司の言葉です。

何年も前のことですが、入社して初めてのゴールデンウィークを迎える前、ちょうど今時だと思います。

 

嬉しかったですね。

自分のことを真剣に考えてくれていると受け止めました。

今でも心に響いている言葉です。

 

某企業の役員会議で、同社のコンセプトを考えている時に「“人材輩出企業”という概念は適切か?」という議論がありました。

肯定的な意見もありながら、一方で「優秀な人材が育つのは良いが、輩出していく必要はないよね。」という意見も。

後者は、もっともな意見ではあるのですが、この意見を持つ方の認識は少しずれていたんですね。

 

コンセプトを決めたあと、それを実現するために具体的に何をするかを考えるのですが、仮に「人材輩出企業」というワードが並んだとしても、「人材を輩出するために何をするか」なんてことは考えないんですね。

「外でも活躍できる人材を育てる」と同時に「優秀な人材が集まり、離れない」ための施策を考えることは言わずもがなです。

 

ましてや、この企業は国内有数の大企業のグループ会社。

グループ内異動により、人材交流を促進し、本人の視野の拡大、組織としてのノウハウ共有、思考のイベベーションを狙うことは当然のことです。

 

また、自分の可能性の幅を限定しない組織にこそ、優秀な人は集まります。

言い換えると、会社の都合だけで社員のことを縛らないことが、逆に会社の発展につながるのです。

 

何より、同じ人材が未来永劫存在し続けると考えての組織運営は危険であることは周知のことでしょう。

むしろ、ある人が外に出ることで、別の人にチャンスが巡ってきます。

 

採用・配置・発掘・育成・選抜・異動・代謝の流れで人事施策を考える人材フローマネジメントで言えば、「代謝」について哲学を持つ企業が少ないと感じます。

終身雇用が数十年続いていた日本ならではのこと言えるかもしれません。

 

Businessman Wheels Suitcase Across Skyline

 

そして、こういう目線は、会社として持つことも重要ですが、各管理職にこそ必要なものです。

「自分の部下としてどう育てるか」という視点では、自分の手足となる人材しか育てられません。

それは、その上司を越えられないばかりか、上司がいないと何もできない人を育てるのと一緒です。

 

もちろん、専門性の向上は重要ですが、会社が潰れてもやっていけるような人材に育てようとすることで、本当のプロフェッショナルを育成し、そしてその姿勢が部下との信頼関係を醸成します。

少なくとも、「他部署に行っても活躍できる人材に」という想いを各管理職が持つことで、人事異動もうまくいきます。

それは、本人の成長のみならず、会社全体の組織としての成長につながると言えるでしょう。

 

言うなれば、人材育成の出口。

成果をイメージすることは、どのような仕事においても重要であることは言うまでもありません。

育成においてもそれは変わらないことで、さらに「外に出る」という視点が加わることで、育つ人材の幅も、集まる人材の幅も広がります


林 直人Naoto Hayashi
組織変革コンサルタントとして、教育研修プログラム設計や講師、企業理念構築・運用などに従事。